《尖閣ビデオ流出を受けての各紙社説 2010・11・6》

            


尖閣ビデオ流出 政府の対中弱腰が元凶だ(産経新聞)
2010.11.6 03:09

危惧されていたことが現実化した。沖縄県尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、海上保安庁の撮影とみられるビデオ映像がインターネット上に流出し、政権を揺るがす深刻な事態となっている。

 問題点は2つある。1つは情報管理の不備だが、より深刻なのはビデオ映像を非公開とした政府の判断である。

 ビデオは、海上保安庁と那覇地検に厳重に保管されているといい、流出には内部の人物がかかわった可能性が高い。一部の公務員が、自らの判断で映像を流出させたのならば、官僚の倫理欠如を示すゆゆしき事態である。

 仙谷由人官房長官は、5日の記者会見で今回のビデオ映像と警視庁の捜査情報の流出に関連、「流出とすれば、相当大きなメスを入れる改革があらゆるところで必要だ」と述べた。一見、もっともらしいが、情報漏洩の「犯人捜し」と組織改革に国民の目をそらそうという意図が透けてみえる。

 何より最大の問題は、菅直人政権が、国民の「知る権利」を無視して、衝突事件のビデオ映像を一部の国会議員だけに、しかも編集済みのわずか6分50秒の映像しか公開しなかった点にある。

 政府は、公開しない理由について刑事訴訟法47条の「証拠物は公判前には公にできない」を主な根拠にしてきた。だが47条は「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない」と規定している。

 今回のビデオ映像を見れば中国漁船が意図的に海保の巡視船に体当たりしたことは明らかだ。映像の公開は、中国人船長を逮捕した海保の判断が、妥当であったことを国民や国際社会に示す意味でも明確な「公益性」がある。弁護士でもある仙谷長官が、中国をアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に参加させようと、故意に条文の解釈をねじ曲げたとしかいいようがない。

 「大きなメス」を入れるべきは、真実を国民の目から覆い隠し、対中弱腰外交を繰り返してきた民主党政権自身である。

 ビデオ映像は、中国漁船の違法性を証明する証拠として、本来なら政府が率先して一般公開すべきものだった。遅きに失したとはいえ、菅首相は国民に伝えるべき情報を隠蔽した非を率直に認め、一刻も早くビデオ映像すべての公開に踏み切るべきだ。



尖閣ビデオ流出―冷徹、慎重に対処せよ(朝日新聞)

 政府の情報管理は、たががはずれているのではないか。尖閣諸島近海で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した場面を映したビデオ映像がインターネットの動画投稿サイトに流出した。 

 映像は海保が撮影したものとみられる。現在、映像を保管しているのは石垣海上保安部と那覇地検だという。意図的かどうかは別に、出どころが捜査当局であることは間違いあるまい。 

 流出したビデオを単なる捜査資料と考えるのは誤りだ。その取り扱いは、日中外交や内政の行方を左右しかねない高度に政治的な案件である。 

 それが政府の意に反し、誰でも容易に視聴できる形でネットに流れたことには、驚くほかない。 

 ビデオは先日、短く編集されたものが国会に提出され、一部の与野党議員にのみ公開されたが、未編集の部分を含めて一般公開を求める強い意見が、野党や国民の間にはある。 

 仮に非公開の方針に批判的な捜査機関の何者かが流出させたのだとしたら、政府や国会の意思に反する行為であり、許されない。 

 もとより政府が持つ情報は国民共有の財産であり、できる限り公開されるべきものである。政府が隠しておきたい情報もネットを通じて世界中に暴露されることが相次ぐ時代でもある。 

 ただ、外交や防衛、事件捜査など特定分野では、当面秘匿することがやむをえない情報がある。警視庁などの国際テロ関連の内部文書が流出したばかりだ。政府は漏洩(ろうえい)ルートを徹底解明し、再発防止のため情報管理の態勢を早急に立て直さなければいけない。 

 流出により、もはやビデオを非公開にしておく意味はないとして、全面公開を求める声が強まる気配もある。 

 しかし、政府の意思としてビデオを公開することは、意に反する流出とはまったく異なる意味合いを帯びる。短絡的な判断は慎まなければならない。 

 中国で「巡視船が漁船の進路を妨害した」と報じられていることが中国国民の反感を助長している面はあろう。とはいえ中国政府はそもそも領有権を主張する尖閣周辺で日本政府が警察権を行使すること自体を認めていない。映像を公開し、漁船が故意にぶつけてきた証拠をつきつけたとしても、中国政府が態度を変えることはあるまい。 

 日中関係は、菅直人首相と温家宝(ウェン・チアパオ)首相のハノイでの正式な首脳会談が中国側から直前にキャンセルされるなど、緊張をはらむ展開が続く。 

 来週は横浜でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議が開かれ、胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席の来日が予定されている。日中両政府とも、国内の世論をにらみながら、両国関係をどう管理していくかが問われている。 

 ビデオの扱いは、外交上の得失を冷徹に吟味し、慎重に判断すべきだ。 


尖閣ビデオ流出 一般公開避けた政府の責任だ(11月6日付・読売社説)


 尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件の当時の模様を撮影したビデオ映像が、インターネット上に流出した。

 政府内部から持ち出された疑いが濃厚で、極めて遺憾な事態である。

 だが、それ以上に残念なのは、こんな不正常な形で一般の目にさらされたことだ。政府または国会の判断で、もっと早く一般公開すべきだった。

 流出したのは、計6個の動画ファイルに分割された計44分余りの映像で、インターネット動画サイトに投稿された。中国国内の動画サイトでも、転載と当局による削除が繰り返されているという。

 海上保安庁と検察当局が保管するビデオ映像を、何者かが意図的に流出させた可能性が高い。先に一部国会議員に公開された映像は約7分に編集されたもので、今回の映像とは長さが異なる。

 警視庁の国際テロ捜査に関する内部資料とみられる文書が、ネット上に流出したばかりだ。これでは海外から「情報管理がずさんな国」とみられ、防衛やテロなどの情報収集に支障が出かねない。

 流出経路について、政府が徹底的に調査するのは当然である。再発防止に向け、重要情報の管理を厳格にしなければならない。

 流出した映像をみれば、中国漁船が巡視船に故意に船体をぶつけたのは一目瞭然(りょうぜん)である。

 もし、これが衝突事件直後に一般に公開されていれば、中国メディアが「海保の巡視船が漁船に追突した」などと事実を曲げて報道することはできなかったのではないか。これほど「反日」世論が高まることもなかったろう。

 中国人船長の逮捕以降、刑事事件の捜査資料として公開が難しくなった事情は理解できる。だが、船長の釈放で捜査が事実上終結した今となっては、公開を控える理由にはならない。

 中国を刺激したくないという無用な配慮から、一般への公開に後ろ向きだった政府・民主党は、今回の事態を招いた責任を重く受け止めるべきだ。

 中国外務省は、国会での限定公開の直後に「ビデオでは日本側の違法性を覆い隠せない」との談話を発表した。

 世界中に映像が流れた今、こんな強弁を続けていれば、国際的にも批判を浴びよう。

 中国は速やかに国内の対日強硬論を抑え、日中関係の修復に努めてもらいたい。来週の胡錦濤国家主席の来日に合わせて、日中首脳会談を実現させるべきだ。


尖閣ビデオ流出 統治能力の欠如を憂う(毎日新聞)


 尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の模様を海上保安庁が撮影したビデオ映像の一部がインターネット上に流出した。同庁と検察当局が捜査資料として保管していた証拠の一部である。その漏えいを許したことは政府の危機管理のずさんさと情報管理能力の欠如を露呈するものである。

 捜査権限を持つ政府機関の重要情報の漏えいはつい先日も明らかになったばかりだ。テロ捜査などに関する警察の内部資料がネット上に流出した事件だ。横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前にした度重なる失態は菅政権の統治能力すら疑わせる。早急に流出経路を解明し、責任の所在を明らかにしなければならない。

 海保は巡視船が衝突される前後から漁船に立ち入り検査するまでの模様をビデオに収めており、全体で数時間分あるという。ネット上に流出したのはその一部とみられ、約44分間の映像だった。巡視船2隻に中国漁船が衝突する場面が明確に映っており、生々しい衝突音も収録されている。

 政府が先日、国会に提出したビデオは約7分間に編集されたもので、視聴は予算委理事らに限定された。限定公開に対しては、全面公開を主張する自民党などから「国民に事実を知ってもらうことが大切だ」などの反対論が出た。しかし、政府は国際政治情勢への配慮などを理由に慎重な扱いを求め国会が要請を受け入れた経緯がある。

 それが、政府と国会の意図に反する形で一般公開と同じ結果になってしまったことに大きな不安を感じる。この政権の危機管理はどうなっているのか。

 海保によると、那覇市の第11管区海上保安本部や石垣海上保安部、那覇地検など検察当局のパソコンなどに映像が残っている可能性があり管理状況の調査を進めているという。

 もし内部の職員が政権にダメージを与える目的で意図的に流出させたのだとしたら事態は深刻である。中国人船長を処分保留で釈放した事件処理と国会でのビデオ限定公開に対する不満を背景にした行為であるなら、それは国家公務員が政権の方針と国会の判断に公然と異を唱えた「倒閣運動」でもある。由々しき事態である。厳正な調査が必要だ。

 中国側はビデオ流出について「日本側の行為の違法性を覆い隠すことはできない」との外務省報道官談話を発表した。ビデオ映像は中国の動画投稿サイトにも転載され、「中国の領海を日本が侵犯したことがはっきりした」などの反論が出ているという。このビデオ流出問題にどう対処するか。菅政権は新たな危機管理も問われている。


尖閣ビデオ 政府対応が招いた流出(東京新聞)
2010年11月6日

 尖閣漁船衝突事件の模様を収録したとみられる映像が動画サイトに投稿された。政府のちぐはぐな対応で、事件直後なら日本の主張を裏付けた映像が、日中関係修復を急ぐ政府を困惑させている。

 ビデオ映像は何者かが動画サイト「ユーチューブ」に投稿した。中国漁船とみられる青い船が、尖閣付近の日本領海で海上保安庁の巡視船らしい船二隻にそれぞれ衝突する模様を映し出している。

 「ぶつけてくるぞー!」の叫び、中国語による停船命令などの音声も収録され、現場の緊張した雰囲気が伝わってくる。漁船は取り締まりを恐れる様子もない。

 前原誠司外相は「海保が撮ったものだと思う」と述べ、投稿映像が本物という見方を示した。

 九月上旬に起きた事件の直後、中国は巡視船が漁船に衝突してきたと主張していた。当時、映像が公開されていれば漁船の危険航行を立証する根拠になった。

 日本の主張を国際社会にアピールでき、中国の行きすぎた対抗措置をけん制したに違いない。

 ところが政府は公開をためらい逮捕した船長の身柄を送検した。映像は那覇地検が証拠として管理し公開のタイミングを逸した。

 九月下旬、地検が「日中関係への配慮」を理由に船長を処分保留のまま帰国させ公判の可能性がなくなっても、映像は証拠の扱いを受け公開はできなかった。

 この間に政府はブリュッセルで菅直人首相と温家宝首相の「廊下会談」を実現させ関係緩和に動いた。政府は関係修復の動きに水を差すことを恐れ、ビデオ映像公開を遠慮するようになった。

 十月末にハノイで予定されていた首脳の公式会談は関係改善に対する中国国内の反発を恐れた温首相が土壇場でキャンセルした。今月十三日から横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で胡錦濤国家主席との首脳会談実現を目指す政府は、ますます映像の扱いに慎重になった。

 映像流出は真相にふたをした事件の幕引きに反発する政府関係者が、かかわっている可能性が高い。捜査資料の流出は遺憾だが、それを招いたのは政府の混乱した事件への対応ではないか。

 中国は憂慮を表明しているが自らの主張を覆す映像をめぐり、ことを荒立てるとは思えない。流出映像で明らかになった日本の立場の正当性も背景に、政府は主張すべきを主張し首脳会談実現を中国に迫る外交力を発揮すべきだ






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