《小沢氏ニコニコ動画サイト出演・詳報・2010・11・3》
産経新聞 11月4日(木)7時42分配信

            
Web動画「ニコニコ生放送」に出演し、話をする民主党の小沢一郎・元代表 =3日午後、東京都千代田区麹町(荻窪佳撮影)(写真:産経新聞) 



 民主党の小沢一郎元代表は3日、都内でインターネットサイト「ニコニコ動画」に生出演し、野党の求める国会招致や菅直人政権の政治姿勢などについて語った。詳報は以下の通り。


 −−ニコニコ動画より国会に出るのが先じゃないか。後輩の岡田克也幹事長と会談ぐらいすべきだとの意見や国会軽視との声もあるが

 「別に私、国会出てないわけではありませんで、必要なとき、ちゃんと出ている。今、みなさんがおっしゃっているのは、政倫審(政治倫理審査会)とか証人喚問とかという話だろう。あのー、僕の今回の問題については、なかなか新聞、テレビが正確に真実を報道していただけないので、整理したい」

 「私は何も隠すことありません。報告書みてくれたらそれ以上のことはない。去年の3月から、検察の強制捜査が後援会に入った。私自身も事情聴取も受けたし、私の個人資産から何から全部調べられた。1年余にわたって捜査、公権力による捜査を受けた。それでも結局何も不正がないと不起訴になった。

 ですからこのことまず、前提としてわかってほしい。ただ、検察審査会で、そのことをもう一度法廷で明らかにすべきと意見が出ているので、今、手続きが進められている。

 もう私は司法の裁判所の手続きに入ってきているもんですから、それを三権分立の立場からいえば、原則としては司法で取り上げているものを、立法府がいろいろと議論をするというのは基本的にはあまり妥当ではないと。

 いけないっちゅうことではないが、妥当でないし、必要でもないんじゃないかと思っている」 

 「もうひとつは、政倫審も証人喚問も基本的に秘密会だ。裁判というのは全部公開だ。私は隠していることないから説明すること何もないんですけども、それを改めて『国民皆さんの公開の場でやりなさい』というが検察審査会の意見なもんですから、僕はそれに従って、もし、公判ということになればきちんと説明したいと思います。

 それが基本だが、このニコニコ動画、国会にも出ないでどうのこうのという批判があると聞いたが、結局非常に多くの人に(公開され)オープンで意見もいえるし、僕も反論できる。多くの方にわかってもらえるから、むしろ(国会より)いいんじゃないかなと。そう思って出演要請を快く受けたということです」

 −−岡田幹事長から「政倫審出てほしい」などの連絡はあったのか

 「具体的な話はまったくありませんでした。秘書を通じて『ちょっと話がある』ということだから、話といっても幹事長と話をするのに何の、まあだいたいこんなことだろうと思っていたけれども、こうこう、こういうことで、こういう話をしたいというふうな説明はまったくなかった。

 『中身はどういうことでしょうか?』というやりとりを1、2回やりました。うーん、最終的にこれは本人からじゃなく、すべて本人からではなく、秘書の人からうちの秘書に対して、最終的には『国会招致の話だ』ということは秘書を通じて聞きました。

 そして私は、今のような話を、別に僕は以前に、僕のことじゃないが、証人喚問に出たこともあるし、別にどこに出るのも嫌じゃないけども、今言ったような理由で、すでに司法の場で、しかも公開の場で結果として公判になればやることになる。

 そこで説明することは、何回も言うように報告書以外にないですけども、そこでちゃんとやることで、『国会の中でやるというのは司法と立法の関係であまり妥当じゃない』というふうな返事をした」

 −−岡田幹事長とは話してないのか

 「秘書を通じてうちの秘書に連絡があっただけだ」

 −−岡田幹事長から正式に国会に出てくださいといわれたら断るのか

 「岡田くん1人が決める話じゃないですから。国会として、その前に党として、今申し上げたような基本的な考え方をどういうふうに考えるか、どういう結論を出すのか、ということをまずやらないといけない。

 岡田くんと僕で個人的に『出ようよ』『出ないよ』の話をすることではないだろうと思っている」

 −−議院証言法では被告人は不利益な供述を強いられないという規定がある。小沢氏から菅首相が野党にそう表明するよう求めては

 小沢氏「菅さんからは何もいわれていない。岡田幹事長からも菅総理からも直接何もありませんから。間接的にはそういうことを申し上げている」

 −−今の状況では小沢さんは黙って逃げているイメージがある

 「いつもそういわれるんですよ(苦笑)」

 −−小沢さんから出ていくべきだ

 「それは本人が、総理や幹事長が『説明をしてほしい』ということであればだが。

 ただ政倫審やなんかに『出るべきだ、出るべきだ』という議論が最初の前提にありきではちょっと違うんじゃないかという気がして。強制起訴になるかどうかわからないが、手続きが進みつつあるものだから、公判が一番いいんじゃないかなと」

 −−公判は開かれるまで早くても1年ぐらいかかるのでは

 「そんなに長くないんじゃないですか」

 −−裁判までの間、いつまでも小沢氏は説明しないといわれるより小沢さんから菅首相に説明すべきでは

 「そうですね、本当はそう言ってもらえれば一番いいし、そういうことで話をしようということであれば、僕自身が総理と話をしても、することにはやぶさかではない」

 −−21世紀、ニコ動のようなメディアに政治家が出たいと思って当然だ。だからこの際はっきりと言ってほしい

 「僕は新聞やマスコミのイメージでは、なんか裏にいて、談合して、こそこそやっているみたいなそんな話ばかりされますがね。

 一番最初に記者会見でも、私は記者クラブ制度をやめて、『どんな方が来てもいいですよ』といったのは僕ですから。

 それをずっと自民党時代から続けてきた。今でも続けてます。

 僕はどんな立場になってもそれはオープンにしてやりたいと思っている。そして代表や幹事長のときは毎週、記者会見もあるから、そこで全部その話、常に聞かれている。

 説明しない説明しないといわれているが、まったくオープンのメディアの前で、何度も何度も申しあげている。

 だから中身からいっても、そういう意味からいっても、説明しろったって、何を説明するのかという気も若干ある。

 だが、自分からきちっと、いったらどうかいなというのは、ひとつのあれだと思う」

 −−今回の件は違法性もなく立件もできない。ただ違法性の有無だけでいいのか。あるいはカネは合法的なら巧みに使うことは問題なく、批判はできない人間のやっかみと反論したらどうか

 「そこね、僕の主張はちょっと違う。違法な行為はしていないと、大きくいえばその通りだ。

 だが、法律にちょこっと、ここが触れたとかあれが触れたとかという問題をいっているのではない。

 検察の当初の主張は、あれは闇献金を、不正なカネをもらっているんじゃないかというところから捜査が始まった。

 これはうちの秘書ももちろん私も『不正なカネなんて、ビタ一文、もらってません』ということをずっと言ってきた。

 ただ事務的なミスで売買の時期が2、3カ月ズレた。それは違法といえば違法だが、事務的ミスはあったけども、そんな不正な、裏のカネをもらってはいませんというのが私の主張だ。

 だから、たまたま法に抵触しなかったから、オレはいいんだとはいっていない」

 −−不正防止のため政治資金をガラス張りにすべきだという議論については

 「政治資金ばかり問題になっているが、日本社会全体の問題だと思う。

 政治資金は完全に1円までオープンすべきだ。簡単にいえば。

 しかしそれだけじゃなくて、行政でも、民間会社でも、本当に情報が伝わっているかというと、全然伝わっていない。

 役所も信頼しない政治家に絶対本当のことを教えない。情報を出さない。会社だって株主や社員に、本当のトップシークレットは出しっこない。それは、絶対これは秘密しないといけないものもあるとは思う、国であれ会社であれ」

 「だけどできる限り情報というのは、開示するということが、主権者たる国民が判断するうえにおいて一番大事なことだ。

 お金のことでいうと、誰からいくらもらって、何に使ったのかということがはっきりすれば、国民はあんなヤツからもらうのはけしからんとか、あんなところで使うのはけしからんと、判断ができる。

 それがベールに包まれる部分が多いから、結局わかんない、いいかげんな、おかしなことをしているんじゃないかという話になる。

 規制はできるだけ取っ払った方がいい。それでオープンに、すべてオープンということが一番いいと思う」

 −−オープンにすれば、集めたカネは政治力の源泉としていかに使うかは政治家の能力なのか

 「そらそうだと思います。

 党のカネは別ですよ。党のカネは一定の基準で、きちんと判断しないといけない。

 個人にどうぞ使ってくださいと言っていただいたお金は自分で政治活動のために、志を同じくする者のために使う、それは一向に悪いことじゃないと僕は思ってます」

 −−政治資金規正法で金額を減らすという動きがある。それはどうみるか。金額を減らすと政治が小さくならないか

 「ですから、日本では政治に関する疑獄事件でも、その他の事件でも、何か起きると規制強化とやる。

 規制強化するということは官僚の権力を強くすることなんです。官僚というか、公権力を強くすることですから。だから、基本的人権を侵害するおそれがある。それはなるべく止めた方がいい。

 オープンにして、主権者たる国民が判断すると。判断する材料をきちんとオープンにしてみんなに見せると。僕はそういう社会にもう少し日本をしないといけないと思います」

 −−資金管理団体「陸山会」が購入した土地や不動産の原資は。小沢氏個人所有ではないことを明らかにしたという「確認書」は(指摘に対する釈明のための)記者会見の直前に作られたのではないか

 「まず、水谷(建設)うんぬんの話だが、もし、5000万だか、1億だか、1億なんぼだかわかりませんが、それを僕が裏でヤミで受け取ってたなら、私は起訴されてましたよ。

 私は一切、不正なカネはもらってない。うちの秘書も絶対もらっていないと。常識的にもあり得ないことなんですよ」

 「たぶん検察は水谷だけじゃなくて、ほとんどのゼネコンをはじめみんな調べたと思います。それから僕に対して善意で献金してくれる人たちもかなり調べられた。数多く。

 だけども、一切そういう不正なお金はないということが、私自身もそう(主張してきたわけ)だし、検察(の判断)もそうであったから、不起訴となったんだと思う」

 「今言った確認書、何カ所か事務所あるので、その中で、僕は必ずそれを作成しろということを全部、いってまして、たまたま、1つズレておった、忘れてたというのがあっただけだ。

 ですからそれを、もちろん気がついて、確認書を作ったというだけだ。

 本当これも、マスコミの人のまるっきり勘違いで、最初は政治団体の長は秘書だった。(政治家本人ではなく)他人だった。

 そうすると、このことは秘書がやったことだから、政治団体の連中がやったことだから、オレは知らんといって、政治家が言い逃れすると。

 それはダメだということで、政治家が(資金管理団体の)トップになるように法改正になった。だけども、政治団体は登記が法律上できない。政治団体の名前では。

 だから、結局トップの人間が、政治家の名前で(登記を)やることになった。今は今できるようになったのかな?政治団体も政治団体で登記できるようにすれば、何の個人財産との混同も疑われることもない。そこはそういうふうに法改正した方がいいと思う」

 −−確認書は今回の土地の確認書か。別の問題の確認書がズレていたのか。

 「今回問題になっている土地だったと思いますけれども、契約書は問題なくそうなっている。契約書は全部、政治団体でやってます。これははっきりしたもの。

 ただ、契約書だけではダメなので、念のため確認書をつくっている。それは、全部きちんとした確認書をつくっているが、たまたま結果的に漏れて、忘れておったということだから。気がついたときに作ったというだけです」

 −−今回の捜査で大久保隆規元秘書を調べたのが、証拠改(かい)竄(ざん)で逮捕された前田恒彦検事だった。小沢氏の取り調べで恫喝(どうかつ)や誘導はなかったか

 「僕については別にそんなあれ(恫喝など)は、ありません」

 −−丁寧に?

 「ええ。丁寧な常識的な質問でした。

 うーん、それから大久保を調べた人が、調書を改竄したりうんぬんという、たまたまその人だったと。

それについて僕がどうこういうことではない。

 大久保の容疑も、政治団体からもらったと。政治団体を通じてもらったんだから、政治団体(からの献金として)で届けたと。それは、実質は企業献金じゃないかと(いうのが検察側の主張だ)。

 だが、こういうケースは言い出したらいっぱいある。なんとか工業会とかなんとか協会とか。あれは全部、企業献金だ。だけど、政治団体をつくってますから、政治団体からもらえば、政治団体からもらったと届け出を出すので、大久保はそういう考えで(届けを)出したので、法律に反するようなことはないんじゃないかと思う」

 −−メールを紹介する。小沢氏が罪を犯しているようにふるまうマスコミや野党と現内閣こそ、小沢さんを落とす既得権益者ではないか

 「民主党内閣ですし、政権をもって予算や法律を通さなくちゃならないと。対野党との問題もあるということで、ちょっとそういう発言になっているんじゃないかと思いますけども。僕は自民党はじめ野党の皆さんも、僕が今申し上げたことはきちんと理解してくれると思ってます」

 −−容疑者を逮捕し長期間勾留(こうりゅう)し、リーク報道がなされて社会的に抹殺されたような状態が作られれば、本人にとっては自白するかどうかの問題ではなくなる。今の状況をどう変えるべきか

 「マスコミのニュースソース、情報源がどこであるかということは、私もわからない。それについてどうこうは言わない。捜査中のことについて、いろいろと報道、新聞テレビが報道するというのは、少なくとも民主主義国家では日本だけじゃないでしょうかね。ですから、それはちょっと民主主義社会では、報道自体がやってはいけないことじゃないかと思う」

 −−こういう状況を放置するのは政治の怠慢だ。有力な政治家として考えはないか

 「検察とか、国会とか裁判所とか役所とか、どこでもそうだ。本当に国民から選ばれた者が、国民主導、政治主導、それが責任をもって決定していく。そういう仕組みにしないと、日本はいつまでたっても民主主義が定着しない。

 国の機構、統治の仕組み、それを根本的にやはり変えないといけない。明治以来140年、僕はそういう時期にきていると思う」

 −−証人として出る、出ないも憲法の問題だ。官房長官も首相も認識がはっきりしていない。質問してはどうか

 「議院内閣制で同じ党ですからね(笑)」

 −−民主党も代表質問を行う。小沢氏が質問に立つべきだ

 「私が質問なんかに立ったら、メディア大変でしょ。ははははは(笑)」

 −−質問すれは問題の所在がはっきりする

 「この問題だけテーマしぼってやるとちょっと変だが、自民党も他の政党もやはり本当に、国会のあり方、民主主義社会がどういうものかということをきちんと認識してやらないと天にツバする話になって、民主主義は成り立たない。いつまでたっても。

 そういう意味で、僕は国会の議論というのも、与野党があるので、政権を取るためにいろいろなテクニック、手練手管という要素は当然否定できない。

 しかし、基本の考え、基本の姿勢として国民に選ばれた政治家だ。この民主主義を定着させないといけないんだと。民主主義はこうあるべきだと。その根本のところだけは共有していないと日本の将来は大変心配だ」

 −−国会審議はネット中継もされている。そういう場で小沢氏が発言する方が伝わるのでは

 「政府に対して僕が質問するの? ははははは(笑)」

 −−記者会見では最小限のことしか答えていない

 「ちょっとやっぱり、もう少し勉強して質問してほしい、という意識もあるのでついついビシッと。こういう言い方なんですが。僕は新聞でもテレビでもなんでも出ろといわれれば出るが、一定の枠で切り取ってやられてしまうんじゃ議論にならない。

 だから自由に互いの立場、新聞・テレビの方が『いや、自分はこう思う』という意見があればいっていいが、言わないで、『こういうふうに人はいっているが』という話をされたらとても話し合いにならない」

 −−正面切って話せば話してくれるがコミュニケーションがうまくとれていない。メールを紹介する。岡田幹事長がニコニコ動画で公開対談を申し込んだら受けるか

 「はははは、うふふふ。それは同じ政府・与党ですからねえ。そこでこう議論すると、また『民主党内が割れている』とかなんとか(批判されるので)、難しいですね」

 −−日中関係はどうか

 「中国に対してもロシアに対しても米国に対しても同じだが、やっぱりきちんと自分の主張をしないといけないと思う。政府は。日本政府としての主張をはっきりしないとダメだ。僕は尖閣(諸島の問題)についても、中国の首脳と会談したときにはっきり言っている。『これはいまだ何千年の歴史の中で、中国の政権の支配下に入ったことはない』と。『これは琉球王朝の領土で、琉球王朝が貢ぎ物を中国へ出してたかもしれないが、領土になったことはない』と。『それで沖縄が日本と一緒になった。これは日本領土であることは間違いない』と。『これは絶対に譲れない』ということを言った。そしたら、いやあ、はっきり答えなかったです」

 「『(中国の元最高指導者の)●(=登におおざと)小平さんが後世にまかせようと言ったんだから、まあまあ』という話をしたが、僕は絶対にこれは譲らんよと、そういう話はもう最初から伝えている。それに対して状況も中国内部も変わったかもしれないが、正論に対して筋論に対しておかしな反論はしない。筋道立った議論、主張をするべきだ。ロシアに対しても」

 −−ロシア人専門家に聞くと、去年の初夏から北方領土の対話の場が途絶えているらしい

 「自民党もどこの国に対してもたいしたチャンネルはあったわけじゃないと思いますよ。ただ、長く政権をやってましたから、いろんな意味でいろんな人を、米国や中国、ロシアの人を知っていたのは事実でしょう。それに反して民主党は初めてなので知らないということは事実だ。ただ、今までの関係があったか、ないかということも背景として大事だが、自己主張することは何も初めての人だって国と国を代表してやるんですから、それは堂々とやっていいと思う。そして大陸の連中は、自己主張しない人間をものすごく軽(けい)蔑(べつ)する。僕はあの日米交渉に携帯もネットもそうだが、やらされた。僕は外交は知らなかったが、ギャンギャンやった。だけどもお互い、いい仕事したねといってカラっとして別れた。日本ならあの野郎と感情的になってしまって」

 −−平和ボケした頭でとなえる強硬論はこわい

 「そうそう」

 −−尖閣も北方領土も見ていてハラハラする

 「そうです」

 −−政府は今になって尖閣諸島沖の衝突事故のビデオを公開した。小沢さんならどう処理していたか

 「僕がもし、政府の責任者だったら、船長を釈放しませんね。しかもですよ、その検察官、いわば行政の役人が日中関係の政治状況、環境を考慮して釈放したというんでしょ。これはもう僕は本当にいけないと思いますね。やっぱり何といわれようが、政府、内閣としてこういう状況をかんがみて釈放することにしたというべきだと思う。行政の役人が政治判断して逮捕したり釈放したりなんて、これはまったく法治国家、民主主義国家でなくなる。だから政治家は軽蔑される。国内的にもちょっと非常に禍根を残したと思うし、中国に対して結局釈放した。これはよくないと思う」

 −−これで終わりになるといいが

 「中国だってロシアだって過去の経過や歴史的事実は知ってますよ。ロシアだって僕はゴルバチョフ(元露大統領)と会談した際、『戦争で占領したんだ』と。『バカなこと言うな。(旧)ソビエト(連邦)、ロシアと日本は一度も戦争状態になっていない。おまえたちの方が中立条約を破って、一方的に侵略して千島(列島)まで占領したのはソビエトじゃないか』。そういって僕は反論した。ゴルバチョフ(氏)は何もいわなかったですけどね」

 −−小沢氏ならどうしていたか

 「見せるかどうかは別ですけれども、政府が分かっているんだから。政府が判断すべきことですよね。『一体どうなっているんだ』ということから始まったわけだから政府が毅(き)然(ぜん)として、『これは日中関係を勘案して釈放することに決定しました』とか、あるいは『領海侵犯ですから、いくら中国が文句を言ったって釈放しません』とか、『法に照らして裁きます』とかいうべきだったんじゃないですかね」

 −−政府は自分の責任でこうしたとはいわない。小沢氏の問題も岡田克也幹事長にお任せだ

 「そうだから決めないですよね。わたしはこう思いますとか、私がこういうふうに結論したとか(言うと)責任が生じますからね。別に今政府の人のことを言ってるんじゃなくて、日本社会のそういうコンセンサス社会で『みんなで決めました』『みんなで渡れば怖くない』というやり方だ。だけど、今やこういう大変化の時代にこういうことではダメだと。だからリーダーシップといわれるわけでしょう。そういう意味でトップの人たちだけでなく、それぞれの人たちがきちんと自分の意見を言うと。そういう習慣をつけないと、日本は成り立っていかないと思いますね」

 −−はがゆいか

 「政府だけじゃないですけどね。あらゆることにね」

 −−首脳同士で話せば外交は進むのでは

 「そりゃあ、もう、直接会って本人とやるべきですよ。日本人ちゅうか何ちゅうか、今のちょっと、悪い癖はね、面と向かってしゃべらないでね、よそんとこでメディアでしゃべったりね。例えば僕のことでも文句あるんならオレに面と向かって言えと。なんであっちこっちでね、陰口きくんだと。そういうんですよ。外交の問題も同じなんですよ。例えば、中国でも米国でも、その場はニコニコ、ニコニコして、調子のいいこと言って。それで帰ってくると、そうだの、こうだの悪口言うでしょ。それがものすっごく信用を落としている」

 −−TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についての考えは

 「私は自由貿易論者です。そして自由貿易によって一番利益を得ているのは日本です。だから考え方は賛成だ。今、農業だけ騒いでいますけど、農業だけではない。金融とかサービスから何から全部(TPPには)含まれてますから、その国内の体制を政府がきちんとしないうちに全部オープンにしちゃったら、そらもうごちゃごちゃになっちゃいます。みんなやられちゃいます。ですからそういう、全く無防備な、大きな何の考えもなしにただ賛成というのは、私はそれはいけないと思います。基本原則は賛成です」

 −−農家への戸別補償制度はセーフティーネットのはずだ

 「そーう、そう!」

 −−ばらまきとも言われるが

 「徹底されてない。戸別補償方式をするには適地適産しなければいけない。なんでもいいから勝手につくってというわけにはいかない。そんな話ではない。必要なもの、私は東北ですが東北で一番適したもの。九州で適したもの、それを適地適産でやれば、それは私は食糧自給は可能だと思う。日本は。今、4割以下でしょ。それを民主党は6割とかいっているのかな。6割なんかダメだ。100%にしろとぼくはいってるんだけども。ほんと、できんです」

 「その意味でもセーフティーネット。これは農業だけではなく、水産業もそうですし、あるいは一般のサラリーマンもそうです。完全に日本の雇用制度、良くも悪くも日本の旧来の雇用制度、崩れちゃったでしょ。終身雇用。これ、崩れたまんまでバンバン、バンバン、規制撤廃するからね、失業だの、非正規だのっちゅう問題が起きている。全体が問題なんですよ。だからそういう意味のセーフティーネットをきちんとつくって、それで自由化すべきです」

 −−アジア太平洋経済協力会議(APEC)までに政府がしっかりしたものをつくるかだが、閣内がはっきりしない

 「方向として、日本は自由貿易で生きてきた。方向としてこれを将来の目標としてやるのはいいが、そのために、じゃあ国内政策はどうするんだ。国内の対策はどうするんだ。それをきちんとやらないと、国民は全員が不安になっちゃうと思いますね」

 −−民主党政権は高い期待を担って政権交代を実現したが、期待に応えていない。原因は?

 「若い人たちと毎日、ちょこちょこ会ったりしているが、参院の選挙の時以上に、むしろ民主党を支えてきてくれた人がコアな人たちの批判がある。何だという感じで言われると。だから、本当に国民の皆さんがそう思って、ひいきの人でさえそう思っているんだろうと思います。その最大の原因は、もちろん背景としては政権を経験したことがないと。トップリーダーはじめ皆さんが。それが最大の背景にあると思います」

 「ただそれは仕方ないことで、やっぱり一番の問題は政治主導。国民主導だから、やっぱり政治家が結論をきちんと出す。各省大臣であれ、誰であれ、その部署にある人が『私はこういう結論を出しました』と。もちろん、みんなが全員一致して同じ結論が出れば一番いいんだけども、みんないろんな意見があるから。最終的には責任者が決めなくちゃいけない。民主主義なんでそうですから。そこをきちんと決めない。『オレが決める。オレが責任を持つ』ということをもう少し心がけないと、役人がついてこない。『新しい政策をやんなくちゃダメだ。今まで通りではダメだ』と思っている役人もいっぱいいる」

 「だけど役人の方から新しいことやって、批判されて、コテンパンにやられたら、『責任(は)全部、おまえかぶれ』ということになったら、役人としてはやれないですよ。だから結局、こういう青写真の下で個別の、『この政策、ぜひやってもらいたい、この責任はオレがとる』といえば役人は必ずついてくる。ですから結局、怖いですから、躊(ちゅう)躇(ちょ)しちゃうと結局、役人も『責任とらされるよりは今まで通りやってりゃ無難だ』となっちゃうんだ」

 −−閣僚になった人など民主党はもっとできると思っていたが

 「閣僚とかの問題ではなく、自分自身で結論を出して責任を取らないといけない。そういう場面は政権党の中では、野党と違って数多くあるんだということをわかってなかったということはある。ただ、自民党も長年、政権党だったですがね、自民党も全然ない。ないんだけども、いい時代だったでしょ、自民党は。右肩上がりのいい時代だったから、いろんな矛盾が全部隠されていたわけですよ。そうじゃなくなったもんですから、矛盾が吹き出てきちゃった。だから自民党政権はつぶれちゃったわけだ。この二の舞にしないように民主党政権は絶対、成功させたいですよ、そうしないと観念的な右左の極端な議論に(なる)。両方ダメだ、自民党もダメだ、民主党もダメだ。そういう左右両極の議論が強くなる。これが一番、不幸だ」

 −−今の政権に足りないとすれば

 「それぞれ一人一人がね、もう何ちゅうかな、悪い言葉で言えば、開き直りとかいうか、腹を決めることですね。ポジションにつけば、そのポジションなりの仕事(を)自分の自由にできるんだから。できるんだったら、もちろん民主党の考え方に沿って具体的政策を自分が決めていく。その腹を据えることじゃないでしょうかね」

 −−民主党政権をあきらめてないか

 「あきらめてません。もし、これ、失敗したら、ぐじゃぐじゃになって、多分、民主党がダメとなっても、自民党に(政権運営を)返そうとは(有権者は)思っていないと思います。すると民主党も過半数取れない、自民党も取れない、みんなぐじゃぐじゃ、ぐじゃぐじゃになっちゃう。それで極右、極左が出てくる。これは悲劇だ」

 −−小沢氏は民主党を飛び出すとかいわれるが

 「民主党内でこの間もいっぱい支持してくれる人が、私、いますので。何も私が出る必要はないと思うし、それはいけないと。やっぱりこの政権を成功させるということに全力を尽くしたいと思っています。そういう意味で一人一人が、みんなね、だんだん、だんだん、若い人ほど認識しつつあるんじゃないでしょうかね。有権者と一番、接しているでしょ。一番言われるようですよ。そのためには君ら自身がしっかりしないとダメなんだと。だんだん認識がしっかりしてきている」

 −−今後、どういう役割を果たすか。首相としてやる局面を待つか。違う展開を待つか

 「まだ裁判なってないので、どうかわからないが、既定路線でいえば、そういった(裁判になる)可能性は高いが、僕のいっていることを理解してくれる人は大勢いますし。話聞かせろという人も全国あちこち、いろいろいますので。そういう意味でポジションがないだけに、フリーですから。全国をできるだけ求めに応じて回りたいと思っています」

 −−小沢氏は起訴相当議決は不当という主張だ。政治活動を制限しなくてもいいのでは

 「あ、僕はそのつもりはない。ただポジションがないですから。一兵卒ですから。ただ、私としてできることは、やっていきたいと思っています」

 −−雇用の問題が好転していないが、処方はないか

 「一つはね、財政の健全化か、景気かという、すぐそういう議論しますけど、それは相対立するもんじゃ僕はないと思ってんですよ。だから景気が悪いときはやっぱり、景気の拡大策を講じなくちゃならない。そのためには必要なときには、多少、国債増発しても仕方ない」

 「ただ、非常に、何度もいいますけど、無駄が多いんですよ。これね、全然、これもうメディアが報道しないですけどね、仕分け、仕分けっつってますけど、仕分けもいいんですが、結局、(政府がしたのは予算の)一律カットですよ。全部。財政当局としては一律カット以外にやりようないんですよ。優先順位(は)役人の仲間同士でつけられないんですから。だから、一律カットじゃ、もうお金出てこないんですよ。必要なものはやる。必要でない物はやめるというのを、それぞれの人たち、閣僚はじめ、みんなが腹決めて、それこそまた腹決めてやれば財源は出てくる。しかし、それでも足りない場合は、もちろんやんなきゃいけないと思いますよ。僕は。財政出動を」

 「それと、だけどね、雇用の問題はね、景気が悪いから雇用が少ないっちゅうこともありますけどもね、それ以上に僕は、さっきいった雇用のシステムが非常に崩壊してしまったと。日本的システムに代わる新しい雇用のシステムできたのかというと、そうでない。もうパッパカ、パッパカ切り捨てることのできる米国流のシステムになっちゃって、本当にみんなが働いてくれて会社があるんだと。だから、できる限りクビ切りはしないで、解雇しないで、みんなでがんばろうという経営者の意識がなくなってきてますよ。大企業ほど。僕は本当にけしからんと、この大企業は」

 「で、中小企業の方がむしろ『長年働いてくれた。おれがみんな面倒みなきゃ』って私財を投入してまでね、一生懸命やっているところ、いっぱいありますよ。それで、そこが技術をもってるんですね。日本は。中小零細企業が。だから僕はそういうね、経営者としての心構えと、それから雇用の制度が、これはもう一度見直すべきだと。あの『小泉某』によってね、みんなめちゃくちゃにされましたけど、雇用の仕組みをもう一度やり直すということは必要だと」

 −−小沢氏がトップならどこを切りつめるか

 「僕は(地方向け補助金の)一括交付金(化)、一括交付金って代表選のときもいったもんだから、菅さんも、政府も一括交付金っていってますけどね。あれをね、一括交付金っちゅうのを本気にね、今度の予算で実現できたら大したもんです。去年の予算のときも交付金、交付金と僕も役人にだまされちゃったんだけど。結局、補助金なんですよね。名前だけ変えたんですよ。そうじゃなくて、地方に自由に使えるお金を出せば、それが本当にもう、今のお金の、極端にいうと半分でいいんです。自由に使えないんですから」

 「例えばね、そん中でも、『いや、おまえ、いうけれども、福祉の関係は15兆円。これは全然切れないじゃないか』という議論があります。しかし、これもね、実態はみんな地方がやっているんですね。だから、僕は15兆円、もう全部地方にやっちゃえばいいんですよ。そうして、例えば今、高齢化社会で介護ってあるでしょ。介護はいろんな特養だ、なんだかんだ、かんだなんだって厚生省(現厚生労働省)の、いっぱいつくっているでしょ。それでそこに補助出している。もちろん人件費補助もあるけれど。そういう厚生省のメニューにしかお金を出さないんですよ」

 「地方に任せなさい。そうすれば、自宅で介護できる人は自宅でやる。その方が本人にとっても幸せなんです。そして、その個人の家庭をサポートしてやる。補助金を出してやる。支援金だしてやる。そういうことも自治体にまかせれば、自由にできるわけです。今、厚労省にやらせたら、できないです。15兆円もお金使って、ろくなアレ、できないじゃないですか。だから、そういうことを考えると、僕は非常に無駄を省くという作業は、まだまだできると思います」

 −−今のやり方だと生ぬるい?

 「いや、財務省がね、みんな(旧)大蔵(省)、財務(省)が悪いといいますけどね、彼らだってね、今まで通りでいいと思っていないですよ。さっき言った話ですよ。だけども、ここは役人の方から『こんなのやめて、こうやった方がいいじゃないですか』とか言うことはできないですよ。役人の立場としては。それは政治がやらなくちゃなんない。そして青写真をちゃんとつくって、それで『これをやる』と。『結果はおれが責任を持つ』というふうにやればね。財務省だって優秀な連中、いっぱいいますから」

 −−責任を持つ覚悟がないから、民主党政権はフラフラしているように見られるのか

 「国民の皆さんからね。まあ、それぞれの人が腹決めて、自分の思った通り、きちんと責任持ってやりゃいいんじゃないですか。その結果の判断は国民がするんですから」

 −−覚悟を持ってやっていく?

 「あ、僕はそうですよ。はい。僕はだから何も悪いことしてませんから。何もやましいことないですから。ただ今の制度上ね、検審(検察審査会)でもう1度公判でやれっちゅう話になっちゃいましたから、やりますけれども、政治活動を続けていきたいと思っております」

 −−小沢さんの国家ビジョンとはどんなものか

 「僕が言ってんのは自立と共生という理念なんですけどね。一番はまずは日本人に必要なのは自立。ちゅうのは自分自身の価値判断を持ち、自分自身で意見を持ち、そして自分の責任で行動するという日本に、僕は、なるべきだと。自立した日本人の集合体が自立した国家なんです。日本なんです。それがまず第一だし。日本人としては」

 「それから国家の理念としては共生。これは国内でも人々の、国民同士の共生、仲良くするっちゅうこともありますが、他国民、諸国民との共生。すなわち、平和の問題。それから、もうひとつは自然との共生。これは環境の問題。だから、僕は個人個人の日本人には自立を求めているし、そして自立した個人が国家を構成すると。そして日本は他の国と、他の民族との共生と自然との共生。環境と平和と。これを僕はね、21世紀のね、このあるべき姿としてね、日本が発進できるような国になりたいと。そうあるべきだと、そう思ってんですよ」

 「日本人ぐらい偏見もない、宗教的の壁も何もない、あるいは文化的な壁もないでしょ。何でも取り入れて、全部、自分のものにしちゃうでしょ。だから、ものすごく共生の理念に日本人っちゅうのは、性格的に、あるいはDNA的にあってんじゃないかと思ってんですよ。だけど、それを発信できる、21世紀の社会、国家というもんはこういうもんだという発信(を)できる日本になるべきじゃないかなと思ってんです」

 −−岡田幹事長が企業・団体献金を認めることにした。これはどういうことか

 「うーん、ま、もう政治資金の関係ではね、ちょっとわかりません。彼の真意は」

 −−今の菅政権をどう思うか

 「だけど、それは代表選挙で菅さんを選んだんだし、そのときは世論調査なるものは7割だかあったでしょ。まあー、それはやっぱり、総理は党内手続きで選ばれるんですけど、結局に背景にあるのは、国民が選ぶんですから。この間、7割支持したのが、すぐ半分なっちゃうっつうのも、僕はね、おかしいと思うんですよね。国民もね。もっと国民がしっかりしなきゃダメですよ。国民、しっかりしないと、政治家もしっかりしないですよ」

 −−そういう意味では菅直人首相に小沢さんが何か言ってもいいのでは

 「だから菅さんは自分がこうだと思うことを、首相はもう万能ですから、思うことをきちっと主張して、自分の責任で断固やったらいいんじゃないんですかね。僕が菅さんと、いつか話したときもいったんですよね。『総理大臣なんだから、好きなようにしたらいいんじゃないの』と。『その代わり責任をとって、国民があとはどう考えるかは別の問題』」

 −−小沢さんは後継者を育成しなかったのが欠点といわれる。人材育成の考えを

 「僕もだんだんこの年になりまして、本当に後継者を、次の世代を担う本物のね、政治家を育てたいと。あるいは政治の分野じゃなくたっていいんですけど、本物の若者を育てたい。そう思ってます。それで政治家でも、むしろ若い人たちに私は非常に期待してます。自分が直接選挙戦を手がけたということもありますけれども、しかし、政権をとるっちゅうことは、多くの候補者が多くの人たちにもまれて当選してきたわけだから、こっからその意味で、風ももちろんあるんだけども、風だけでないものを政権党の議員として、今、現実を眺めながら、感じつつあるんじゃないかと」

 −−沖縄県知事選では民主党は政権党なのに候補をたてない。最近の選挙事情をどうみるか

 「僕は候補者を立て過ぎるっつって怒られたんですけど。やっぱり政権党であれ、野党の自民党であれ、もう自民党も今や立てらんなくなってきましたけど、それでもまあまあ、地域に根はってますからね、立ててきます。やっぱり本当に議会制民主主義を成熟させる、定着させるためには、政権与党としてきちんと、せめて県知事レベルくらいまでは立てていく方針が、僕は正しいと信じてます」

 −−沖縄は米軍普天間飛行場をかかえている。民主党の考え方を見せなきゃいけない選挙だ

 「そうですね。まあ、本当はおっしゃる通りにすべきのように思いますね。私も」

 −−岡田氏に電話してアドバイスもいいのでは

 「とても、とても僕の意見なんか入れられませんよ」


戻る
戻る



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送