【民主党代表選・討論会詳報 2010・9・10】

首相、国有財産の証券化「財源捻出の手段にならない」 民主公開討論会
産経新聞 9月10日(金)18時2分配信

 
【民主党代表選・討論会詳報】

 菅直人首相(民主党代表)と小沢一郎前幹事長は10日、民主党有志議員が主催した公開討論会に臨んだ。小沢氏が補助金の一括交付金化や無利子国債、国有財産の証券化で財源が捻出(ねんしゅつ)できると主張したのに対し、首相は財源捻出を目的とした一括交付金化を批判し、国有財産の証券化などについては「財源捻出の手段にならないし、なったとしても一時的な捻出手段だ」と強調した。

 司会進行役は山口義行・立教大教授。公開討論会の詳細は以下の通り。

 【小沢氏冒頭発言】

 「われわれは…。すいません、昨年の総選挙におきまして、まずは徹底的に行政の無駄を省いて、そこから、われわれの主張する政策の財源を捻出するということを国民のみなさんに約束をした。したがって、まずは行政の無駄を省く。それに全力を私は尽くすべきだと思う。その観点から考えてみますと、まず、補助金ということになりますと、みなさんはすぐ21兆円。そのうち15兆円弱は社会福祉だとおっしゃられる。しかしながら、補助金といわれるものも含めて義務経費、人件費を除いた義務的経費。これは20兆円の裁量的経費、いわゆる政策的経費というものがある。そこに21兆円の中の社会福祉の予算を加えますと、もちろん35兆円という政策経費があるわけですけれども、私は基本的に、まずは補助金と呼ばれるものにつきましては国民主導、政治主導の政治を確立するという以上、これを本当に現実のものにするためには、中央官庁で持っているその力の源泉はお金と権限である。したがいまして私は、地方にかかわることについては地方にお金も権限も任せる」

 「いわゆる補助金の一般交付金化と呼ばれているそれでありますけれども、それによってかなりの行政の負担が、無駄が省くことができるし、また地方行政を考えてみますと、陳情したり役所にいろいろと働きかける。これで20%から30%の経費がかかる。したがって、中央の予算の無駄を省くと同時に、地方の行政の無駄も省くことができる。もちろん私は社会福祉関係の予算については、そのまま地方に交付すべきだと思っている。現実に実態は市町村がやっておるわけでございますので、これを削減するということではなくて、この点については全額地方に交付すべきである。それにより、よりよい、今よりはるかに充実した福祉行政が地方において展開できるのではないかと考える。その他、いろいろ、独法(独立行政法人)やその他への一般会計の補助金もあるが、そういうことでもって無駄を省くことに全力を挙げてわれわれの主張を実現すべきだ」

 −−基本は無駄を省き財源を捻出すると。その際の一つとして、補助金の一括交付金化といわれた。これについてどう考えるかも含めて菅さんから財源についてお話しいただきたい

【菅直人首相冒頭発言】

 「まず一言、この会を主催していただいた皆さんにお礼を申し上げたい。まさに民主党らしく有志が集まって政策議論をしようという場を作っていただいた。本当にうれしく思っている」

 「今、山口先生から財源という大きな表現がありましたので、私の中では2つの点で申し上げたい。1つはマニフェスト(政権公約)を実行するための財源ということだと思う。これは、マニフェストには無駄を省くという財源を捻出する要素と、そのお金を使って新たなマニフェストの政策を実行する要素。09年度マニフェストにはその両面があって一体となっている。昨年の例で言えば、3兆3千億のうちの3兆1千億を使って子ども手当の1万3千円などを実行した。しかしガソリン税については財源が捻出できなかったこともあって、それは、税率そのものは維持したという形になった。来年度の予算編成にいよいよ本格的に入っているが、そういう中で基本的に09年のマニフェストは私たち全員が国民に約束した、まさに政権公約ですから、それを誠実になんとしても実行する努力は全員が全力を挙げてやらなければならない」

 「同時に、それに必要な財源についても事業仕分けなどを含めて徹底的に無駄を削減していく。これまで以上の努力が必要だ。そういった中で、たとえば子ども手当などについて、最終的に当初予定した月2万6千円という形がどういう形で可能か。ぎりぎりのときの財源も含めて、基本的にはお約束通りやるのが原則だが、どうしても難しい場合にはその理由などを国民に説明をしてご理解をいただくことが必要だ」

 「それから財源という言葉にはもっと大きな意味がある。後ほど出てくるのかもしれないが、たとえば社会保障とそれにかかわる財源については、一体で議論すべきだと各党とも、わが党も従来から言っている。そういった大きな意味の財源についても、しっかりとした議論が必要だと考えている」

 −−小沢さんが言われた一括交付金は地域に主権を移動するということではなくて、財源捻出という点でも効果があるということだ。菅さんはその点についてどのように評価しているか

 首相「私は一括交付金という考え方は、まさにわが党の、ある意味、一丁目一番地でありますから、ぜひ今の補助金の形を変えていくことはなんとしても進めなければならないと思っている。ただ、地方主権のために補助金から一括交付金に変えるということと、財源を捻出するということは区別をして考える必要があるだろう。つまりは、財源、権限、場合によったら人材を国から地方に移していく。まさにこれが地方主権の国のかたちを変えることだと思っている」

 「それと、たとえば今、話があったひも付き補助金約21兆円といわれているが、そのうち15兆円程度はたとえば国民健康保険とか介護とか、あるいは生活保護に充てられている。確かに地方に全部一括して移せば多少の工夫はきくかもしれないが、それを大幅に切り込むことができるのか。それが社会保障の低下につながらないのか。これはしっかりと検証していかなければならない。一括交付金化はぜひ、全力を挙げてやるべきだが、財源の捻出という考え方とは少し区別をして検討することが必要だと考えている」

 小沢氏「私は15兆円弱の福祉関係予算を削ると言っていない。先程もこれは、一括して全額地方に交付すべきだと言っておりまして、今、いろいろな形で厚生労働省で何をするにつけても、大変な細かいところまでいろんな規制がかかっている。そういう意味で実態をやっている市町村にそれを、お金を、15兆円を任せることによって地域の実情にあわせた福祉行政が絶対今以上のことが、5倍も10倍もの、地域にとって大きな効果をもたらすだろうと申し上げているので、これを削ると言っていない。その他の公共事業やら、あるいはさっき言った裁量的経費が60兆円ある。この中から当面の増税をしなくても、当面のわれわれの政策、主張を実現する経費は必ず生み出すことができると思っている」

 −−財源が捻出可能だというのは、現場が使い勝手がいいように工夫すれば同じ金額でも大きな効果が出せるというふうに考えて、捻出として役立つという話か

 小沢氏「結果としてね。はい」

 −−菅さん、その可能性はあんまりないということか

 首相「いやあ、たとえば、ある番組でも申し上げましたが、私、長野県の栄村というところにかつて行った。そこで村長にお会いしたら、たとえば90%、国から補助金がきて、10%自己資金でやっている事業が、村独自でやったら10%の部分だけでできたと。しかも大きい10倍でやったときは県外の業者がやってきて、大きな規格でものをつくるわけだ。村にあった規格を、自分たちの村の関係者に仕事を発注してやったと。そういう意味では、まさにこのひも付き補助金というのが大きな大きな無駄を生んできたことは間違いないと思う。そういう意味で、そうした形の自主性を自治体に移すということは、最も重要だし、そのときに今申し上げたようなこともありうると思っている」

 「ただ、先程申し上げたのは社会保障の分野は、確かに工夫の余地はあるが、農業、土木とか、いろんなように、国の基準だと10倍使わなきゃいけないのを10分の1にするようなことは、たとえば生活保護の場合はなかなか難しいわけですから、そういう点では一括交付金にかえることそのものは私は、ぜひやらなければならないと、最大の政策だと思っているが、そのことと財源捻出とが、100%、そのためにやることは少し区別してやらなければならないと思っている」

 小沢氏「私は一括交付金化というのを、ただ単に財源をそこから捻出するという意味だけで言っているわけではない。結果として無駄を省いて、福井県の半分で済むものを倍の税金をかけ借金をした例も何度も申し上げた。結果としてそういう無駄を省くことができるというのが私の持論であると同時に、国民主導の政治、地域主権をわれわれはずっと訴えてきた。地域主権。官僚主導から国民主導の政治に変えるためには今の行政の機構、統治の機構。そして予算配分を変えなければ、ただ単に言葉だけになってしまう。官僚の最大の力の源泉はカネとそれにまつわる関連の権限です。だから私はこれを地方にかかわることについては、お金も権限もそこへまず移すということによって、われわれの最大の主張の前提である地方主権、官僚主導から国民主導の政治に移すと。それが最大の大きな高い壁ですけれども、これを乗り越えなければならない。結果として、そこで無駄を省くことができるというのが私の主張だ」

 −−小沢さん、今のこと以外に無利子国債や国の資産の証券化を提唱している

 小沢氏「無利子国債は一般論としてそれでやるともうしあげたわけではない。高速道路を、日本の道路は欧米の2.5倍から3.5倍、国土面積当たり一般道はある。ないのは高速のネットワークなんです。これを作るためには道路会社でやっている中央の旧建設省でやっているのではなくて、地方でもって地方の事情に応じて、地方ができるようにする。そのための建設費は無利子国債で出すと。地方はちがって、金利分だけで自分たちの思うような高速道の建設をすることができるというのが1つ。それから600兆円に上る国有財産。そのうち200兆円は証券化の対象になりうるといわれている。そして証券化すれば、かなり市場でも流通するだろうという予測をうかがっている。そうしますと、順次やっていくことによって数兆円の、そこから財源を生み出すことができると聞いておりますので、私としてはその手段も有効ではないかと思って提案している」

 −−この点について菅さんの意見は 

 首相「無利子国債という議論はかなり広く従来からある。私もいろんな方からお話を聞いた。基本は、無利子国債を買った方は、それを相続するときに相続税が減免されるということが前提になった議論が大部分だ。そうなると、相続をするときに相続税を払われる人はインセンティブがあるが、払う人は相続の数パーセントなので、そうでない人は対象にならない。それによって、どの程度の費用が賄われて、長期的に見てどちらがプラスになるのか、私は検討の価値はあると思うが、それで大丈夫、やりましょうというところまで私の中ではそこまで自信を持っていえる状況にない。もちろん一般的にはですね」

 「それから国有財産を証券化する。これも多くの方からいろんな話を聞いて、かなり検討した。国有財産、貸借対照表上は600兆ぐらいあるが、多くは道路とか、あるいは自衛隊の基地とか、皇居なども入っている。どの部分が果たして証券化できるのか、一般的には流動性の低いものがベースになりますから、たとえ証券化しても、今の国債金利よりは高い金利になるのではないか。どちらにしても国債と、ある意味で1度しか、1回証券化してお金をいただけば2度、3度は使えないわけだから、埋蔵金的な性格のもので、しかも金利としては一般の国債より高いものになるのではないか。そうすると、無利子国債以上にこの部分は、一般的にこの分野のマーケットは数兆円、ひとけたの何兆円といわれているので、それほど大きな財源捻出の手段にならないし、なったとしても一時的な捻出手段であると思っている」

 小沢氏「菅さんは相続税免除の非課税国債と、無利子国債を混同していると思う。私が相続税免除の非課税国債を発行すべきだなどとは思っていない。無利子国債は金利がつかないという国債で、地方の建設費がいる場合に無利子の国債。すなわち簡単に言うと、地方は金利分だけは負担しなさいよと。建設費の元本は国債で面倒見ますということを私は申し上げているわけで、相続税免除の非課税国債は私は賛成では基本的にない。それから、私は証券化の問題についてでありますが、これは私も専門家ではありませんので、どの程度の財源を生み出すか、自分自身で計算してはじき出したものではありませんけれども、200兆円を証券化してそれが流通していくことになれば、年数兆円の財源を生み出すことができるという試算を勉強して、それも1つの有力な手段ではないかというふうに申し上げた」

 【財源、消費税】

 −−小沢氏の言われる無利子国債というのは、国が無利子の国債を発行し、買い手は金利がほしいということで、その分は地方自治体が出すということか

 小沢氏「そうです、そうです。非課税国債じゃないと僕言ってんのは。だから菅さんが非課税国債と混同しているんじゃないでしょうか。私が言っているのは無利子国債のことだ」

 −−当面の財源の話と国民負担のあり方の問題として消費税論議も出てくる。長期的な、大きな国を描くという意味ではそれも含めて議論する必要があるということでよろしいか

 首相「まず全体の話をするとすれば、やはり経済成長、雇用中心に私申し上げてますが、やはりその経済成長がなくしてはやはり財政も成り立たないし、社会保障も成り立たない。そういう中で私は強い経済、強い財政、強い社会保障という言い方もし、この3つのことを、これまではどちらかというと何か社会保障を充実させれば、逆に経済にマイナスになるとか、財政にマイナスになるとか、トレードオフのような形で受け止められてきましたが、それをうまく連動させることによって好循環のサイクルを回していきたいと考えている」

 「その中で社会保障については、もう1つの観点として、やはり多少の負担はしても、子供や自分たちの老後を安心な社会でありたいと願うのか、負担はできるだけ小さくして、あとはもう個人の自主努力、自己責任でいくのかという大きな2つの考え方があるわけですが、私は、国民の多くの皆さんは、ある程度の負担はしても、安心できる社会をめざしていて、そして、その安心できる社会をつくることがまた経済にもプラスになり、財政にもプラスになるような形と、そういう意味で社会保障と財源については一体的に議論することが必要だと申し上げている」

 −−その際の財源は消費税が中心になるのか

 首相「これはもちろん所得税、別の議論の意味での法人税もありますが、法人税、あるいはヨーロッパなどは環境税などをかなり福祉に充てている国もある。ですから消費税も含めた、まさに税制全体のことと、この問題はやはり一体的な議論が必要だ」

 −−この点について小沢氏は

 小沢氏「われわれは昨年の総選挙で、とにかく徹底して行政の無駄を省くと。そしてそこからわれわれの政策、主張の財源を見いだすと国民の皆さんにお約束をした。そして鳩山内閣におきましても、それをまず優先するんだと。そして消費税は、この任期中は上げないということを国民の皆さんにも明言している。ですから、私はその意味で全力でこの無駄を省くということ、そしてその一つの方法として、地域主権、国民主導の政治をつくるためには、官僚からその財源と権限を地方へ移すことだということを主張いたしておりまして、そういうことをまずとにかく、この任期で一生懸命頑張って、そしてそれでもなお、社会保障関係費は少子高齢化でどんどん増えていきますので、それでもなおかつ足りないというときには、もちろん消費税をはじめとした税制全般の論議をしなければいけないと思っておりますけれども、まずはわれわれは昨年約束して政権を任されたんですから、その約束したことを、忠実に実行できるように全力を尽くすというのがわれわれの本来の姿ではないかと思う」

 【円高対策】

 −−金融政策で対応してもなかなか効果ないとよくいわれている。単独介入も実は単独だけでも難しいという意見がよくある。アメリカやヨーロッパとか、要するに通貨切り下げ競争みたいなことではなく、ちょっと話し合いをする時期がいずれでてくるのではないかと思うが、アメリカも含めて通貨の問題で少し話し合おうということは、例えば投機を抑えるという点でも重要だと思うが

 首相「これは私、財務相のときにも、中央銀行総裁とともにG7といった会議にも出ましたし、最近ではサミットの方にも出てG8さらにはG20の中でもそういう議論は相当あります。今の状況はユーロ圏、ヨーロッパはまさにユーロ安に誘導しているといってもいい状況で、アメリカもやや自分のところの輸出を倍増というようなことをオバマ大統領は言ってますので、そういう意味ではなかなか協調してくれる状況にはなかなか難しい」

 「ただ、少なくとも何らかの行動をわが国がとったときに、ネガティブなことは言わないでほしいということでいろいろやってます。ですから、国際的な形での協調もありますけれども、2国間の中でもしっかり対応しないと、断固たる措置をとったときに、逆にマーケットがどう反応するのか、そこまで考えて今、いろいろな検討を進めさせている」

 −−小沢氏は今のことについてはどうか。国際協調が難しい現状だが、その行動を起こす必要も出てくるのではないかということだが

 小沢氏「先ほど、市場介入も辞せずという腹構えを申しましたが、現実には各国が円高を容認するという状況の中では日本一国で市場介入ということをやっても、なかなか効果が上がらないということは事実だ。ただ、私は、今菅さんも断固たる処置という言葉をお話になりましたが、経済はかなりマインド的な要素が非常に強い面もありますので、私はその断固たる処置をとる。言い換えれば市場介入も辞せずということを強く政府として表明すべきではないかというふうに思っている」

 「それから日米、あるいはユーロ圏との話し合いですけれども、これは彼らの経済の悪化によっていわばドル安、ユーロ安によって、結果として円が高くなっているという要素が強いわけでございまして、その意味ではアメリカ経済、ヨーロッパ経済が立ち直ることが一つの円高の歯止めになると思います。ですからその意味で、ただ単に急激な円高が困る、困るという話では話し合いにならないのではないかと思いますんで、お互いの経済が成長できるようなそういう政策をお互いに協調しながらやっていくという話し合いに持っていかなくちゃいけないと思っている」

 −−日本の国際競争力を維持する上でも、海外、米国以外との関係を進める必要があるという意見があるが、国際戦略について

 菅直人首相「新成長戦略を6月に閣議決定し、昨日、新成長戦略実現会議をスタートさせた。いよいよ設計図に沿って具体的に実行する段階に入った。今、山口先生が言われたところに、ちょっと焦点を絞ると、やはりアジアが成長しているなかで、その成長をきちんと日本に連動させていくことの努力が必要だ。この間、この20年の日本の状況をみておると、たとえば、小泉政権のときに、いろいろ、制度金融、いわゆる政府系金融機関を一本化したのは、それはそれで、行革という意味合いはあったかもしれないが、結果として、郵便というような機能が非常に低下をして、あまりこの思い切った投資の後押しができなくなっていた。今、それを根本的に変えることを、政府としてやっている」

 「具体的な形で言えば、アジア開発銀行は総裁は日本から出ていて、非常にアジアから喜ばれている。また、個々の課題で言えば、アブダビの原発や、ベトナムの原発では、一歩立ち遅れたが、それを挽回(ばんかい)するために今、各大臣がトップセールスで出かけていったり、いろんな、たとえば、原発の場合は、60年間の保障をしろと。今までの単独企業では、なかなか難しかったのを、ある程度、国も絡んだ体制をつくって、それができるようにする。そういう点では、アジアの成長を日本につなげていく。先程のインドの例もそうだが、それは、新成長戦略のライフイノベーション、あるいはグリーンイノベーションと並んだ、アジアの成長を日本につなげていくという大きな柱の一本として、積極的に取り組む段階に来ている。このように申し上げたいと思う」

 小沢一郎前幹事長「世界の各国との関係で言えば、私は、先進国も発展途上国も、欧米もアジアの世界も、アジア地域もみんな同じだが、自由貿易協定(FTA)を積極的に私は結んでいくべきだと考えている。自由貿易で一番利益を得るのは、わが日本だと思っておる。従来、これができなかったのは、特に農業、漁業と1次産業が、それによって成り立たなくなってしまうというのが、最大の反対の理由だった。しかしながら、私どもは、そのことを考慮に入れながら、だからこそ、戸別所得補償制度を導入したわけだ。これを漁業にも適用していこうと今、しているが、このことによって、生産者の再生産をきちんと確保することができさえすれば、私は自由貿易協定は何も恐れる必要はない。積極的にわが国の発展のために取り入れていくべきだと思っている」

 「今、菅さんがおっしゃったように、いろんなプラントの輸出で、まだ競争力あるのはある。また、インフラ整備でも競争力あるのがある。そういったものは大概、大企業だが、中小企業でも、さっきいったようなファッション文化的なものであるとか、あるいは、たとえば卑近な例で恐縮だが、岩手県産のリンゴも、『日本のリンゴなんか高くて食えない』という状況だったが、中国をはじめ、東南アジアの方に、生活のアップとともに、売れるようになった。そういったように、今まで、大企業でなければ生産性の高い企業でなければ輸出競争力がないというように、固定観念でみていたが、私はそうではないと。そういった工夫をし知恵をいかし、その相手先の状況をきちんと把握してやれば、中小零細企業でも十分、国内はもちろん、国外でも競争力をつけることができると考えている」

 小沢一郎前幹事長「世界の各国との関係で言えば、私は、先進国も発展途上国も、欧米もアジアの世界も、アジア地域もみんな同じだが、自由貿易協定(FTA)を積極的に私は結んでいくべきだと考えている。自由貿易で一番利益を得るのは、わが日本だと思っておる。従来、これができなかったのは、特に農業、漁業と1次産業が、それによって成り立たなくなってしまうというのが、最大の反対の理由だった。しかしながら、私どもは、そのことを考慮に入れながら、だからこそ、戸別所得補償制度を導入したわけだ。これを漁業にも適用していこうと今、しているが、このことによって、生産者の再生産をきちんと確保することができさえすれば、私は自由貿易協定は何も恐れる必要はない。積極的にわが国の発展のために取り入れていくべきだと思っている」

 「今、菅さんがおっしゃったように、いろんなプラントの輸出で、まだ競争力あるのはある。また、インフラ整備でも競争力あるのがある。そういったものは大概、大企業だが、中小企業でも、さっきいったようなファッション文化的なものであるとか、あるいは、たとえば卑近な例で恐縮だが、岩手県産のリンゴも、『日本のリンゴなんか高くて食えない』という状況だったが、中国をはじめ、東南アジアの方に、生活のアップとともに、売れるようになった。そういったように、今まで、大企業でなければ生産性の高い企業でなければ輸出競争力がないというように、固定観念でみていたが、私はそうではないと。そういった工夫をし知恵をいかし、その相手先の状況をきちんと把握してやれば、中小零細企業でも十分、国内はもちろん、国外でも競争力をつけることができると考えている」

 小沢氏「基本的な考えとしては、日本からモノづくりをなくしてはいけないと思う。アメリカ経済は結局、モノづくりを軽んじて、マネーゲームに陥ったところに、今日の問題点が生じているわけだ。私はそういう意味で、日本の特に中小企業は、まさに技術の宝庫であると私は思っている。だから、このモノづくりの伝統と、さらなる新しい技術の開発には、全力で後押し、支援していかなくてはならないと思っている。また、福祉産業、あるいは、今、菅さんもおっしゃった環境産業も将来、大きな成長が見込まれる。その意味では、この分野は政府が長期にわたって、長期的視野で力を入れていかなくてはならない。そう思っている」

 「いずれにしても、いわゆる今日の不況、非常に厳しい状況なので、私はエコポイントの話であれ、あるいは耐震構造の強化の話であれ、ただちに予備費の執行。1兆円、そしてさらに債務負担を含めりゃ、2兆円の予備費が組み込まれている。私はこれを、直ちに執行すべきであると思っているし、秋口から暮れにかけて、景気の底割れが非常に懸念されている。財政の健全化ちゅうことはもちろん大事なことだが、当面の景気対策ということで、その2兆円でも、もし不足の場合は、私は国債を増発するということも念頭において、まず雇用。雇用を確保するには、景気をよくしなきゃいけない。だから、その意味で、景気対策に万全を期すべきだと考えている」

 【予算編成、雇用対策】

 −−財政再建と景気対策の両立についての意見を

 首相「私は景気のやや足踏み状態になっている今日、必要なことはスピード感と中身だ。つまりどのタイミングで何をやって、何に向けてどの程度の財政を使っていくかだ。今日決定した緊急の第1弾。ステップ1、ステップ2、ステップ3の3弾構えの経済対策の進め方を今日、閣議で決めた。ステップ1は9200億円の予備費を全額使ってすぐに始める。今日から始めることをいくつか具体的な形でスタートさせた」

 「次の段階は、債務負担行為の1兆円だけではなくて、税収が一部予定よりも上がる可能性が大きくなっているので、そういうものを含めて年内に補正予算を組むことも視野に入れて、この景気を下支えし、成長につながるある種の新成長戦略の前倒しをその中でやっていく。そして今、来年度の予算編成を行っている。最重点は成長と雇用ということで組む。これから来年度予算の中でそれがつながっていくように、まずは円高、デフレに対するステップ1、その後の動向を踏まえたステップ2、来年度予算のステップ3を継続的、連続的に進めていきたい」

 −−雇用を生み出すのは大変だ。具体的な手だては何か

 首相「雇用と成長は、いわば裏表の関係にある。経済が成長すれば雇用が生まれるという側面もある。同時に、雇用が大きくなることで成長につながっていくのもある。雇用については、雇用の創出と、雇用を守ることと、雇用をつなぐ。創出、守る、つなぐという言い方をしている」

 「創出はたとえば、グリーンイノベーションとかもあるが、同時に介護や保育のような分野は、需要は潜在的にありながら、仕組みの問題やあまりにも給料が安いということで、せっかくの需要を生かし切れていない。こういうところは、まさに雇用を新たに創造する。今回の場合、20万人の雇用を緊急対策で約10兆円規模の事業費でやることを今日決定した」

 「守るというのは、海外に移転するような企業に対して、国内で仕事がしやすい状況を作る。一部低炭素事業への補助金も出すが、法人税のあり方も含めて海外に税が高すぎて出ていくという傾向もあるので、年内にしっかりと法人税のあり方を検討する」

 「つなぐとは、先日、京都のジョブパークに行って話を聞き、確かに大企業は求人倍率は0.5ぐらいだが、中小企業は4ぐらいある。中小企業がほしい人材、学生さんが暗い顔してやって来るのをカウンセリングして、いろいろ話をして、場合によってはトライアル雇用をやっていると、だんだん元気になってくる。逆に中小企業の人も、去年1人とってみたら元気だった、今年は2人とろうと。かなりの成果が上がっていた。そういうミスマッチをきちんとマッチングさせることも極めて大きいところだ。創(つく)る、守る、つなぐと。これで雇用を拡大していきたいと考えている」

 −−小沢氏は雇用の問題は

 小沢氏「雇用は非常に大事なことだが、雇用を安定させ、増加させるためには、経済全体がレベルアップしなければならない。今日の段階では、当面の緊急景気対策は非常に大きな意味を持つと思っているので、いま第1、第2、第3と菅さんはおっしゃった。私はそれも結構だが、経済というのはマインドが大きく左右するので、思い切って第1、第2をあわせてやるとか、必要なら補正やるぞということを現実の言葉として発信していったほうがいいのではないかと思っている」

 「雇用については、かなり多くの国でやっているようだが、会社が1人雇用すれば、いくらかの支援金、補助金を出すと。新卒はいくら、途中採用はいくらという分け方もしているようだが、いずれにしても景気の拡大と底上げと同時に、そういう個別の施策も必要になってくるのではないかと考えている」

 【政治主導】

 −−政治主導について。小沢氏は今はまだ政治主導が不十分と言っているが

 小沢氏「政治主導、地域主権はわれわれがマニフェストでも街頭でも、みんな言ってきたわれわれの主張の原点だ。従って、これを前提に初めていろいろな施策を実行できる。政治家が、国民の代表が自分の責任で、決断で実行するということだ。しかしながら、明治以来続いた官僚の力は無視できない。非常に厚い高い壁だ。しかし、力の源泉は何かというと、いわば国民から集めた税金と、それらに付随する権限だ。国家レベルで必要なものは国家レベルで使っていいが、地域の身の回りのことのお金については、単なる補助金だけでなく、いわゆる福祉の15兆円も含めて地方に渡すべきだ。それで初めて地域主権、政治主導の政治が実現できると考えている」

 「地域と財源の関係だが、ガソリン税で2兆円以上のものが地方のものとしてやられているが、現実にはその中で3000億円だけだ。市町村が自由に使えるのは。あと2兆円近いお金は、みんな地方のものという名目になっているが、結局直轄の地元負担としてまた召し上げられている。だから、これも含めて地方に直轄事業をやりたいところはそれを使えばいい。そうでないところに使いたい人は、そっちで使えばいい。それで初めて本当に地域主権、いわゆる『国民生活が第一』と。地域社会全般がレベルアップしないと、日本経済全体がレベルアップできない。今日の現状では地域社会はドンドン衰退している。そういう意味でも断固としてこれを実行すべきだと考えている」

 −−官僚主導の仕組みを変えないと実現できないということだが、菅氏は政治主導についてどうか

 首相「政治主導というときに、いろいろ国の形の問題、内閣のあり方の問題、実際の政治運営の問題、予算編成の問題、それぞれある。国の形については基本的に、小沢さんからも話があったが、まさに権限や財源を地域、地方に移していく。私の表現で言えば、江戸から明治にかわるときには、中央集権化をしたわけだが、逆に今の時代は、国がやるべきことは外交、防衛とか、通貨とか基本的なことにしぼって、かつて藩がやっていたようなことは全面的に自治体にやってもらう。そういう形で国の形をかえていく。これがまさに国の形を変更するという意味で、政治主導でやらなければいけない」

 「それと同時に、今の権力構造は縦割りの中央集権構造になっている。ただ国が権限をもっているだけでなく、役所がそれぞれ自分のテリトリーを絶対に渡さない。そのために本当に無駄な労力や無駄なお金が使われている。そういうものを超えた政治運営をしなければならない。事業仕分けなども、これまで官僚の力で表に出なかったものを徹底的に出そうと。それには、かなり政治家も1人や2人でできることではない。この事業仕分けがかなり進んだのは、やはり数十人の仲間がそれぞれの分野で事前調査をしたことが非常に大きかったと思っている」

 「また、いま政調が復活して、これからは政調の中での議論と内閣の議論が連動する仕組みをだんだん広げなければいけないと思っているが、そうすれば400人を超えるわが党国会議員がそれぞれ自分の得意な分野で取り組んでいくと、少なくともこれまで官僚が、政務三役頑張っているが、大臣1人、副大臣2、政務官2人で5人とか6人で頑張っているのと比べると、さらに大きな政治家の力が発揮される。ここにおいても政治主導がより拡大されていく。いろんなレベルでやらなきゃいけない」

 「実際に昨年の予算は少なくとも100%はできなかったが、例えば公共事業が18%カットされ、社会保障が10%増加し、いわゆる文科費用が5%増加したのは、従来の官僚主導では絶対できなかったことをやった。そのことに民主党の政権の自信は持っていいのではないか」

 【国会改革】

 −−小沢氏の考える国会改革は何か

 小沢氏「基本的に今主張してきたことと同じだが、現実に官僚が行政も国会も実質的には全部牛耳っている。国会の審議もほとんど答弁は官僚がしている。イギリス議会と同じように官僚が委員会に出て法案審議の答弁などをするのはやめようというのが私の年来の主張だ。これによって政治家はもちろんしんどいが、勉強して議論に堪えうるようになっていかなくちゃいけないのが1つ」

 「もう1つ、国会の機能は、議院内閣制の中だから、第1党の党首が首相になる。立法と行政と両方の権限を併せ持つような議院内閣制だが、国会自体の機能をもっと高める。官僚から政治家に取り戻すと同時に、国会がもっともっと行政のいろいろな情報を得られるようにしないと、議論はできない。国会に行政から情報提供の権限を持つような仕組みに改めなけりゃあいけないと思っている」

 「いずれにしてもイギリスでは、イギリスの例ばかり出して恐縮だが、一番の成熟した議会制民主主義国家としてたとえて言えば、官僚は国会の議論の場には一切出ないし、いろんな根回しと呼ばれるようなことも事実上禁止されている。あくまでも政治家同士の要望だったり、議論だ。国会も行政もやはり政治家同士でそれを行うことが政治主導の政治、国民主導の政治ということではないかと考えていて、今なおまだ実現されてはいないが、お互いの努力によってそういうような本来のあり方に改革していきたいと思っている」

 −−政府が出した政策や提案に対し、野党も含めて、相当議論をして修正されることもありうるか

 小沢氏「それはもう、政党同士が、議員同士が議論し、コンセンサスが得られるなら、修正するのは当然だと思う。ただ、今言ったように、誤解されると困りますが、法案審議の本委員会については官僚が介在すべきではない。ただ、官僚であれ、その他の民間の方であれ、いろんな情報は提供はしてもらわないといけません。ですから、私はそれらの参考人的な形でもって、いろんな情報を知ると。そういう場は別な、委員会と呼ぶかは別にして、そういう場はきちんと設けなければならないだろう。そういうふうに考えている」

 −−国会改革をある程度、進めることで、政治主導を実現するということだが、そのあり方について菅さんから何か

 首相「まさに、民主党が政権を担当するときに、最も大きな改革はそこから始まったと考える。まずは、国会からいうと、事務次官会議を廃止をした。これは、いろんな言い方があるが、私も厚生大臣をやったときに、前日にすべてのことが合意されたものが翌日の閣議に上がってくる。ですから、中身を見なくても、全部、事務次官同士で終わっているから大丈夫ですよという、そういう形だった。だから、そういう事務次官会議というのは、逆に、そういう役所同士の調整を政治家同士でやらなければならないというのは、なかなか大変なところもあるが、本当に根本的な改革だったと思う」

「それに加え、政務三役というのも従来、私も厚生大臣をしていたときに1人だけ、今でいう副大臣、政務次官がいましたが、まったく相談して何かを進めることは残念ながら当時、なかった。1人の大臣にすべてお役人が取り囲んで、大臣には相談しても、大臣が相談するのは与党とかはありますが、副大臣や政務官というのは1人はいましたが、そういう役割を果たしていなかった。これを政務三役でチームにして、この役所のリーダーシップをとった。これも画期的だったと思う。ただ、もちろん、1年間の中でいろいろと改善しなければならないこともある。つまりは、政務三役は忙しすぎて、全体のことが受けきれない。ですから、もっと政務三役を拡大する。あるいは、党と内閣を連動させる。そういうことも必要になります」

 「さらに言えば、次の段階では国会自体の審議のあり方もこれからかえなければならないと考える。イギリスの例を私はだいぶ、見てきた。総理大臣は週に1回、クエスチョンタイムがありますが、しかし、30分。各大臣は4週間に1回、クエスチョンタイムがある。それ以外は大臣は基本的に質疑には出ません。そして、質問は必ず土日を除き、3日前までに出しますから、夜中までかかって答弁を作ることはない。そう意味では、国際会議がこれだけ激しいときに、つい昨日も岡田(克也)大臣が0泊でドイツまでいってきたみたいなことを、こういうようなことを強いられる今の国会のあり方を与野党を越えてかえていかなければならない。そういうことを含めて、内閣と国会を、まさに国民のために機能するものにかえていくという、第2弾目のやらなければならないことだと、こう思ってます。

【普天間基地移設問題】

 −−普天間問題で、沖縄の海兵隊をどう位置づけるのか。日米関係をふまえて答えてほしいのですが。

 小沢氏「普天間の問題につきましては、鳩山(由紀夫)前首相が非常にご努力をされまして、結果として辺野古の基地として、日米合意としてなされました。私はこの日米合意は大事にして、これを基本にしてやらなければならないと思います。ただ、沖縄の皆さんの反対がある限りこれはできないわけであります。従って、先に進まないということであれば、なんとかして沖縄県とアメリカ政府と合意する点を見いださなければならない。そうしないと、結局は何も進まなければ、普天間の基地を継続して使うと米国が言い出しかねないということに、危惧(きぐ)の念を持っている。米国が政治的にどう判断するかは別だが、いずれにしても、そういうことである以上、何らかの知恵をお互いに出していかなければならない。そのための話し合いはしなければならない」

 「それから、海兵隊は米国の世界戦略、軍事戦略でもって、実戦部隊を前線に置いておくという必要はないという考え方で、米国の考え方の中で進められている問題である。ですから、ドイツからも欧州からも兵力を引き揚げている。基本的に、私はいろんな技術の進歩などにより、私自身も前線に実戦部隊を置いておく必要はない。そう思っている。ただ、米国の場合は、私どもの場合は専守防衛であるが、米国の場合は広くにらんでいるので、その意味でいざというときに軍事力を展開できるようにと、その意味で、いざというときのシステムや足場を必要にしているんだろうと思っている。そういう意味でも、沖縄の基地の問題、普天間の問題も米国の方針もはそうなんですから、十分、話し合う余地があるのではないか。そしてもう1つは、奄美も沖縄のわが国の領土、領海である。ですから、これはできるだけわれわれできちんと守るんだと。それにより、米国のできる、米国の負担を軽くして引いてもらうこともわれわれとして考えなければならないのではと思っている」

−−「話し合いの余地はある」ということだが、菅さんはどう考えるか

 首相「普天間の問題は鳩山前首相が本当に苦労され、そういう中でいろんな経緯を踏んだ中で5月28日に日米合意がなされ、私も副総理としてそれを了とした。この内容が沖縄の皆さんに大変、反対の意向が強いとういうのは私も承知をしている。しかし、日米合意をもう一度、何かに戻すとなると大変な混迷が継続する。私はこの日米合意を踏まえたところからスタートすべきとの立場を一貫して取っている。それと同時に同じ日に閣議決定した沖縄の負担の軽減に全力を挙げる姿勢は今も続けている。今日も仲井真(弘多)沖縄県知事にも出ていただいた、沖縄政策協議会を開くことができた。その場で2つの部会を作って基地のこともやるわけだが、私は基地に関しては、まず、負担軽減でできることから先行できないかと」

 「たとえば、嘉手納以南の返還とか、グアムへの返還とか、8000人の移転とかは計画で日米の中で合意されている。あるいは北部にある訓練場は半分は10年前に返還が決まっているが、いろいろな事情でできていない。こういう事情で、先行して負担軽減を進める中から、この普天間の問題について何らかの打開ができてこないか、こういう順番で進めていきたい、信頼関係を構築しながら進めていきたいと思っている。それから、海兵隊については、私もかつて、たとえば、ラムズフェルド国防長官の時代に、先制攻撃戦略に米国が移った段階で、たとえば米国が(北緯)37度線から米軍が南に下がったことがあります。今も下がっていますが」

 「いろいろ米国の戦略も10年単位でみるとかわっている。そういう点ではいろいろなことが念頭にあるが、今は、北朝鮮が核兵器を開発し、あるいは韓国の哨戒艦を撃沈するという、こういう状況の中ではやはり、日米安保条約、あるいは米軍の存在というのはやはり抑止力として必要ではないかと、こう考えている」

−−今の菅さんの意見に小沢さん、何かあれば

 小沢氏「沖縄の負担をできるだけ軽減しながら、そういう処置を講じながら、沖縄の県民の皆さんと話し合う。それはまったく異論はありません。そういうことも含めて、沖縄の方、米国政府と話し合いをしていかなければならないだろうと考えているということである」

 【新しい公共】

 −−民主党は「新しい公共」を言っている。それについて具体的にこういう政策をやるというのがあれば

 首相「この点は鳩山前総理が非常に力を入れまして、私もその円卓会議に出席し、2日ほど前には円卓会議の皆さんとの懇親会にださせていただいた。私は、この考え方は日本の社会で今、最も必要な考え方、あるいは実践しなければならないことだと考える。たとえば、先日、(兵庫県の)芦屋で高齢者が単独で住んでおられる所で、小さいサテライトを作って、ブザーを押したら3分でいくと。そうすると、普通の方ならかなり施設に入らなければならないような方でも、きちんとみる。孤立死もまったくない。つまり、最近、孤独死とお年寄りが行方不明だとか、何か人間と人間のつながりが家族でさえ、薄れてしまっている。会社でも、地域でも。そういうものをいかにつなぎあい、協力しあうか。こういうことがいろんな分野で努力しなければならないと思う」

 「きょう朝、自殺対策のキャンペーンで何人かの大臣と出かけてきたが、自殺なども、ちょっと声をかける人があれば、家族や、仲間があればかなり違うわけですけども。お金がないだけで自殺をする人は少ないそうだが、お金がないのに加えて、仲間がない、相談する方がない、人間のつながりがないときに絶望され、自殺する人が多いと聞いている。そういう点で『新しい公共』という考え方は、いろんな分野で実践をしていく段階に入っている。政府としてはそういう実践をサポートする仕組みをいろんなかたちでつくるべきだと思います」

 −−小沢さんからは、「新しい公共」について何か考えがあるか

 小沢氏「根底には人間と人間のきずな、特に家族のきずな、そういうものが今日の日本社会の中で崩れ希薄になってきている。そこに高齢者がどこにいるか分からないとか、高齢者が1人だけで住んでいるとかの問題も起きてきている。だから私は人間社会の最小の単位である家族、伝統的な日本の家族は、プラスマイナスの意見もあるが、あまりにも家族のきずなが薄くなっていることが根底にある。やはり、人間同士のきずなを強めていこうというのが背景にあると思う。それを背景にしてNPO(民間非営利団体)とかNGO(非政府組織)とか活動している方がおられる。その活動を国が支援していくことは絶対必要だ。ただ、ボランティアという言葉も言われるが、無償の仕事の提供はできないわけで、きちんとした仕組みをつくって実際にかかった費用は公的に負担しながら、公共的な活動をしていただく仕組みを日本で作り上げることではないかと思っている」

 −−マニフェストをどう位置づけるか。政権交代が行われた意義の現状評価も含めて

 首相「私はかなり前のことになるが、初めて選挙に出たときから日本に政権交代ができる政治の構造をつくりたいと。当時は自民党の長期政権で野党第1党の社会党は定数の半分の候補者を出さず、半分以下だから全員が通ったって半分以下だから政権交代は起きないわけだ。そういう中で、何とか自民党にかわりうる、政権担当できる野党をつくって選挙で勝って政権交代したいというのが最初の立候補からの訴えだった。理由は、1つの政党が長く権力を持ち続けば、いろんな問題が起き、腐敗や癒着が起きる。意見が偏ったり採用されないなど問題がある。政権交代があって初めて議会制民主主義がほんものの民主主義になると考えた。93年に一度、政権交代があったが短時間で終わってしまったので、今度の政権交代はきちんとした成果を上げて、大きな仕組みやサイクルが定着することが重要だと思う」

 「さらに、民主党が政権を握ったことは従来の自民党政権ではできなかったことをやらせようと期待された。やはり官僚が日本の政治のほとんどを決めている、その形を国民が決める、国民の代表の政治家や国会議員が決めた首相が決めるんだと。そういう国民主権の政治に変えていくことが政権交代に国民の皆さんが期待した最大のことだと思う。それがやれるかどうかが、いよいよこれから本格的に民主党政権に問われていることだと考えている」

 −−小沢さんも出馬表明のときに政権交代の意義を強調していたが

 小沢氏「民主主義というのは主権者たる国民が自ら政権を選べるのが民主主義の最も大きな機能だと思う。ところが日本では半世紀以上にわたってほとんど自民党中心の政権が続いてきた、これは世界の先進国では日本がただ一国だ。その意味で、国民が先行きの生活や雇用の不安や、いろいろなことが実生活に大きな影響があったと思うが、勇気をもって自らの手で政権をつくると、勇気ある決断で民主党政権を選んだのだと思う。だから私は日本に本当の民主主義を定着させるためにも、民主党政権を国民の皆さんの期待に応えて成功させなければならないと考えている」

 「そして政権交代の選挙で一番、訴えたのは長い権力は必ず腐敗するとう菅さんの言葉も大きな要因だが、現象としては官僚に丸投げしていた、だから、これをかえなければならないというのが、われわれの主張だったと思う。これをかえることで国民の生活に目を向けた政策を実行できるというのがわれわれの主張の根幹をなしていたと思う。ではどうするか、霞が関が一手に握っている国民の税金と権限を本来の地域の皆さんに委ねる改革をして初めて地方主権の国家ができると思っている。今日の状況を見てみると菅首相以下、一生懸命ご苦労されていることは分かるが、肝心の予算編成の仕組みや経過を見ても一律1割削減のシーリング(概算要求基準)方式は、自民党政権で取られてきた同じやり方、同じ仕組みだ。こういうことの中から本当の国民主導の政治や地域主権は生まれない。だからこそ厚い官僚の壁を打ち破らなければならないと私は主張している」

【最後の発言】

 −−最後にこれだけは言っておきたいことは

 小沢氏「自分が主張したいことは今の中で十分申し上げたと思う。私はマニフェストを国民との約束だと。しかしながら現実の政権で100%それが実行できないというところもあるかもしれない。しかし、約束したことは一生懸命全力で守るんだと。それを実行するんだという努力をする姿が私は尊いと思う。ですからそういう意味において、着実にできるところからやっていくというのが大切だし、その原点、初心に帰らなくてはならない。そして繰り返し申し上げるが、官僚主導の政治を打ち破るためには、そして今の統治の機構をかえるためにはまず第1に、国民の血税たる予算の配分の仕組みを今までのやり方から根本的にかえなければならないというのが私の主張だし、そこからわれわれの国民主導の政治というのが初めてスタートするのではないかと考えている。今まで申し上げたことの繰り返しになったが、ぜひとも私はその厚い官僚主導の壁を、官僚の壁を自ら先頭に立って打ち破って、本当に国民との約束をぜひ実現したいと考えている」

 首相「私はこの400人を超える民主党、すごいグループだと思っている。そのすごいグループがどれだけみんなが力を発揮できる態勢をつくれるかが私の目指すリーダーの1つのあり方だと、私自身に言い聞かせているところだ。私は1年生議員のときは小さな政党だった。ですから、あれもこれもやったって誰も聞いてくれないから、土地問題なら土地問題、丸山ワクチンなら丸山ワクチン。ただその問題ではそればっかりやっていたから、3年、4年やっていたら詳しくなった。たぶん、ここにおられるみなさんも社会経験がたくさんある方が大半だから、この問題ならおれに任せろと思うテーマがたくさんあると思う。そういうものをどのようにしてチームとして形にしたときに、私は本当の意味の政治主導ができると思う」

 「予算について小沢さんからいろいろとご指摘をいただいているが、いよいよこれからだ。つまり、概算要求が出てきて、これから削ろうと思えばもっと削る。そして上乗せしようと思えばもっと上乗せする。これらのことについてそれぞれ1年生であろうが、大ベテランの方であろうが、この分野についてはこういう考え方があるんだから、ぜひなんとかしろ。これは私は政調の中でも、その他の機会でも大いに議論をして、提案をしていただきたいと思っている」

 「その意味で、もちろん最終的に決めなきゃいけないときには、代表に選んでいただき、総理に選んでいただければ、もちろん最終的な責任は負わなければいけない立場であることは十二分に承知をいたしておりますけれども、その過程の中では徹底的に持ち味を生かして議論をする。今、いくつかの特命チームをつくった。たとえば、沖縄の、失礼。硫黄島の問題とか、あるいは新卒者の雇用とか、こういう特命を、できれば50、いや100ぐらいの特命チームをつくって、それぞれの皆さんが自分の得意な特命のチームの中に入って、そして政府と与党一体となって日本の改革を進める。これができれば、衆院の任期の中で、大きな政治の変化が起こすことができると考えておりますので、ぜひみなさんとともにがんばりたい。そのことを最後に申し上げさせてください。ありがとうございました」



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