【鳩山政権樹立を受けての各紙社説 2009・9・17】


朝日新聞
鳩山新首相に望む―「変化」実感できる発信を
 

 鳩山由紀夫首相が誕生した。

 「日本の歴史が変わる。今回の総選挙の勝利者は、国民のみなさんだ」

 新首相の感慨も当然だろう。有権者が自らの手で直接、政権交代を実現させる。それは、明治以来の日本近代政治史上初めての出来事である。

 維新から10年余を経た1879年、福沢諭吉は著書「民情一新」で、当時の英国の政治の姿を紹介した。いわく、英国には「守旧」「改進」の二つの党派があり、それぞれが一進一退、「相互(あいたがい)に政権を握る」。この「平穏の間に政権を受授する」仕組みをこそ、学ぶべし――。

 福沢の夢は、それから実に130年の時を費やし、ようやく実現への一歩を踏み出したことになる。

 歴史を画する政治的事件にしては、いささか静かな船出かもしれない。01年、小泉純一郎氏が表舞台に駆け上がった時のような喝采はない。

 新首相の祖父一郎氏が1954年に政権についた時には「鳩山ブーム」が起きた。脱「占領」、脱「吉田茂」という時代の気分を、新首相の登場が代弁したとされる。その孫も、長かった自民党一党支配の時代を終わらせる大事業を成し遂げたのだが、有権者に沸き立つような高揚はない。

■背骨となる思想は何か

 この責めは新首相に帰すべきではないだろう。おそらく、私たち有権者の政治に対する距離感とでもいうべきものが変わったのだ。

 森政権時代に極まった自民党政治への不信。曲芸じみた「小泉劇場」への一時的な熱狂。そのぶん深くなった後継3代の首相への失望。こうしたいきさつが、政治的な熱冷ましの役割を果たしたのではないか。

 有権者は決然と政権交代を選んだ。しかし、新政権に向ける視線は甘くはない。何を語り、何を実行するのか、じっくり見極めようとしている。

 鳩山新首相がまずやるべきことは、このように冷静な有権者に、「変化」を実感させる力強く具体的なメッセージを届けることである。

 鳩山氏の政治哲学といえば「友愛」だが、あまりにふんわりしていて有権者の腑(ふ)に落ちにくい。

 憲法改正では、かつて「試案」を出版した。しかし、それが現実の争点になる時代ではないし、そのつもりもないだろう。当然である。

 では、鳩山政権の背骨となる思想は何か。腰の据わった言葉を聞きたい。本格的な所信の表明は臨時国会を待つにしても、それまでにも機会はあるはずである。

 期待は、たやすく幻滅に変わる。新首相自身が重々自覚しているように、必ずしっぺ返しがくる。変化への願望に「答え」を出せなければ、民意は本当に冷え込むことになる。

 幸い鳩山氏は、自身の置かれた立場を客観的にとらえるすべを知っているように見受けられる。

 曽祖父の代からの政治家一家に生まれた毛並みの良さを、「親の七光りどころか、二十一光り。弟もいれれば二十八光り」と突き放して語ったことがある。「宇宙人」とあだ名されようが、気にするそぶりもない。

■したたかさと危うさ

 その政治的な来歴を振り返っても、意外にしたたかな側面を見いだすことができる。

 93年、自民党を飛び出して新党さきがけを結成し、細川連立政権に参加。96年の旧民主党旗揚げにあたっては、武村正義さきがけ代表の参加を拒み、その「排除の論理」は流行語大賞にまでなった。菅直人氏との「2人代表制」など、斬新な発想も打ち出した。

 98年には新民主党を結成。小沢一郎氏が率いる当時の自由党との合併を、最初に手探りしたのも鳩山氏だった。このときは挫折するが、後に民由合併は実現し、今日の礎となった。

 「真っ暗闇の絶壁の下が水なのか岩なのかわからなくても、スタスタと進んで飛び込んでしまう」

 菅氏がかつて語った鳩山評は、その政治的な人となりを活写している。

 その勇気は「危うさ」と裏腹だが、首相として熟慮の上なら歓迎である。

 とはいえ単騎独行型のリーダーというわけではない。今回の「全員野球」の組閣からもそれはうかがえる。多彩な人材を幅広く配置した。「左右」「保革」といった戦後の枠組みが、いよいよ遠景に退いていく印象がある。

 一方で、政治家としてのわきの甘さには依然不安が残る。

■言葉の重みかみしめよ

 虚偽献金問題では、自身の初心を思い出してほしい。リクルート事件後、鳩山氏ら当時の若手議員が集った「ユートピア政治研究会」は89年、個々の政治活動費の実態を公表した。政治とカネをめぐる改革論議を前進させる契機となった行動である。いまも政治史に刻まれる軌跡を、汚していいのか。改めて国民に説明するべきである。

 言葉の軽さも気にかかる。危なっかしい発言に周囲ははらはらしている。その「語録」が、おもしろおかしく収集されたりしてきた。

 政治は言葉である。政治指導者は、言葉によって浮きもすれば沈みもする。新首相がまず磨くべきは、言葉による発信力である。

 「すべてこれからが勝負」。この言葉の次に何をなし、それをどう語るか。耳を澄ませよう。


毎日新聞
社説:鳩山政権発足 恐れず「チェンジ」を貫け


 この日が日本の歴史的転換点となることを願ってやまない。民主党の鳩山由紀夫代表が16日、衆参両院で首相に指名され、民主、社民、国民新3党の連立政権が発足した。

 今回の政権交代は、先の衆院選で多くの有権者が民主党に、さまざまな「チェンジ」を期待し、1票を投じて実現したものだ。当面、混乱も予想されようが、それを恐れず、新政権には果敢に政治の刷新に取り組んでもらいたい。

 与えられた使命は十分承知しているだろう。鳩山新首相は初の記者会見で「とことん国民のための政治をつくる。脱・官僚依存の政治を今こそ実践していかなくてはならない」と強調した。

 ◇手堅さ優先の人事
 その政治主導を目指すという鳩山内閣の布陣は、副総理兼国家戦略担当相に菅直人代表代行、外相に岡田克也前幹事長、国土交通相には前原誠司副代表と歴代代表を起用するなど、党内バランスと安定感を重視した形となった。

 厚生労働相に当選4回の長妻昭政調会長代理を充てたほかは抜てき人事は少なく、女性閣僚も2人にとどまって民間人の起用もなかった。鳩山首相には派手さより手堅さをアピールすることで、初の本格的な政権交代に対する国民の不安を払しょくしたい狙いがあったのだろう。

 一方、党内実力者の小沢一郎幹事長に批判的だった仙谷由人元政調会長を行政刷新会議の担当相に起用したのは「閣僚人事でも小沢氏の影響力が強まるのではないか」といった声にも気を使ったと思われる。

 連立相手である社民党の福島瑞穂党首は消費者・少子化などの担当、国民新党の亀井静香代表は金融・郵政担当で入閣、両党の要望にも応えた。総じて言えば気配り型人事だ。

 無論、大切なのは具体的に何を実行していくかだ。内外に課題は山積している。だが、私たちはまず、旧来の行政の悪弊を絶つことが新政権の役目だと考える。つまり行政の大掃除である。

 目に余る税金の無駄遣い。「省あって国なし」の縦割り行政。前例踏襲主義。政治家、官僚、業界のもたれ合い。ここからの脱却は既得権益とはしがらみのない新しい政権だからこそ可能であり、政権交代の大きなメリットでもあるからだ。

 カギを握るのは国家ビジョンや予算の骨格を作るという国家戦略局だ。従来の予算編成は各省庁ごとに積み上げる縦割り型で、しかも、既得権にとらわれ毎年、ほとんど配分は変わらなかった。これを首相らの主導で総合調整するというものだ。

 閣議を事前におぜん立てしてきた事務次官会議を廃止する点も注目したい。会議は全員一致が原則で一省庁でも反対すれば成案が得られず、改革が進まない要因と指摘されてきた。廃止されれば首相や閣僚の権限は間違いなく強まるはずだ。

 ◇情報公開も重要だ
 戦略局が本格始動するのは10月の臨時国会で戦略局に権限を付与するための法案が成立した後となり、当面は国家戦略室としてスタートさせるという。しかし、さっそく前政権が5月に成立させた今年度補正予算の見直しに取り組むことになる。メンバー構成など制度設計を急ぐべきだ。また、ここを足場に政策の優先順位を明確にし、めりはりの利いた政権運営をしてほしい。

 戦略局と車の両輪の役目を担うのが行政刷新会議だ。税金の無駄遣いや行政の不正を洗い出し、政策の財源を確保するという組織だ。隠れた無駄はまだあるのではないか。同じ事業を執行するにしても、これまで高額になり過ぎていなかったのか。この見直し作業がマニフェスト実現の成否を決するといっていい。

 省庁が公表してきたデータを疑っている国民は多いはずだ。岡田外相の課題となる米艦船の核持ち込みをめぐる日米密約の検証などを含め、これまでは表に出ることがなかった情報や資料を公開していくのも政権の責務である。

 官僚の抵抗を排することができるかどうかは鳩山首相のリーダーシップにかかっている。あいまいさが残る菅副総理、藤井裕久財務相、岡田外相らの役割分担を明確にし、首相を支える体制の構築も重要だ。多くの有権者が民主党に期待したのは、ひとり鳩山首相だけでなく、「チーム民主」だったと思われるからだ。

 鳩山首相が会見で「試行錯誤の中で失敗することもある」と認めたように確かに不安を抱えた船出だ。だが、有権者が選挙で与党を代える政権交代の仕組みを日本に定着させるためには一度は通らなくてはならない道だ。

 来年7月にはもう参院選が待っている。鳩山政権に必要なのは、それまでに一つでも二つでも「政治は明らかに変わった」と国民が感じられる実績を示すことである。

読売新聞
鳩山内閣発足 進路を誤らず改革を進めよ(9月17日付・読売社説)


 多くの国民の期待と不安が交錯する中での出発である。

 鳩山新内閣が16日発足した。歴史的な政権交代だが、その高揚感に浸っている余裕はないはずだ。

 世界不況からの脱出、社会保障制度の将来設計、新たな戦略的外交――。新内閣は、政権交代に伴う混乱を避けつつ、待ったなしの課題に総力で取り組み、具体的な成果を上げねばならない。

 ◆公約の「自縛」に陥るな◆

 新内閣への期待は、行き詰まりを見せていた自民党政治の転換にある。それが、衆院選で示された民意と言えよう。

 一方で、行き過ぎた変革が混迷をもたらすのではないかと、国民が不安を感じているのも事実だ。歴代政権が積み重ねてきた日本の進路にかかわる基本政策は、継続する冷静な判断が大切だ。

 民主党は、衆院選の政権公約に固執してはなるまい。民主党に投票した有権者は、すべての公約に賛成しているわけではない。

 子ども手当、高速道路の無料化、温室効果ガスの排出削減目標など、多くの公約は、財源確保や目標達成が疑問視されている。世論調査でも、反対が賛成を上回る例が少なくない。

 民主党とすれば、「公約違反」との批判を避けたいだろうが、自縄自縛に陥り、取り返しのつかない事態になる方がはるかに問題である。公約を吟味し、見直すべきものは見直す勇気が大事だ。

 新内閣では、民主党の菅直人代表代行が副総理兼国家戦略相に、岡田克也・前幹事長が外相に、それぞれ就任した。財務相には藤井裕久最高顧問、国土交通相には前原誠司・元代表が起用された。

 党内勢力のバランスに配慮しつつ、実績のある人材を要所に配置した。手堅い布陣と言えるが、清新さに欠ける印象は否めない。

 鳩山首相は記者会見で、「脱・官僚依存政治」を強調した。そのカギを握るのが、菅国家戦略相と仙谷由人行政刷新相が所管する国家戦略局と行政刷新会議だ。

 ◆政治主導は実現するか◆

 国家戦略局は当面、今年度補正予算の組み替えや来年度予算編成方針の策定に取り組む。

 経済政策では、景気を回復軌道に乗せることが最優先課題だ。一方で、新規施策の巨額の財源確保も必要となる。双方に目配りした舵(かじ)取りが求められる。

 国家戦略局の権限が不明確なため、各府省と摩擦が生じる懸念もある。菅国家戦略相は藤井財務相らと緊密に連携すべきだ。

 行政刷新会議は、各府省や独立行政法人などの事務をゼロベースで見直す。各府省の既得権益に深く切り込み、国の事務を地方や民間に大胆に移管するには、官僚や関係団体の抵抗を排する強力な政治力が不可欠だ。

 民主党の支持団体の労組も抵抗勢力となりかねない。仙谷行政刷新相はもとより、鳩山首相自身が指導力を発揮せねばならない。

 政治主導には、少なくとも重要閣僚は「一内閣一閣僚」というぐらいの布陣が必要だ。自民党政権の年中行事だった内閣改造の慣行を改めることも課題だろう。

 長妻昭厚生労働相は、「消えた年金」問題の追及で脚光を浴びた。今後は、厚労省を批判するのでなく、牽引(けんいん)する責任を担う。官僚を使いこなす手腕が問われる。

 社民党の福島瑞穂党首は、消費者・少子化相に起用された。女性や生活者の視点を政策に反映する狙いだろう。社民党の存在感を示そうとして突出した主張を展開せず、バランスのとれた行政を心がけてほしい。

 国民新党の亀井静香代表は、金融・郵政改革相に就任した。ほころびが目立つ日本郵政の「西川体制」の刷新や、利用者本位の郵政民営化の見直しは必要だ。ただ、民営化の本筋を歪(ゆが)め、巨大官製金融を復活させるべきではない。

 鳩山首相は、政策面で連立相手の社民、国民新両党に安易に引きずられてはなるまい。

 外交では、来週の鳩山首相の訪米が最初の試金石となる。

 ◆日米基軸の堅持を◆

 インド洋での海上自衛隊の給油活動について、首相は「来年1月の期限を単純に延長することはない」という。それなら、「単純な延長」以外の方法で、活動を継続する道を探るべきではないか。

 普天間飛行場の移設など在日米軍再編は、日米合意を着実に実施することこそが、沖縄など地元自治体の負担軽減の近道である。

 北朝鮮の核問題では、米国が最近、北朝鮮との対話に応じる姿勢に転じた。北朝鮮を6か国協議に復帰させ、譲歩を勝ち取るには、国連の制裁決議を着実に履行し、圧力をかけ続ける必要がある。

 鳩山首相は、米中韓露との連携を再確認するとともに、北朝鮮に対する貨物検査特別措置法案の早期成立を図るべきだ。


産経新聞
【主張】鳩山新内閣 国益最優先に針路とれ 現実直視し公約修正も必要
2009.9.17 03:01

このニュースのトピックス:政権交代
 第93代首相に選ばれた鳩山由紀夫民主党代表は、社民、国民新党との連立政権を発足させた。政権交代による閉塞(へいそく)感打破に国民の期待は高く、鳩山首相の責務はきわめて重い。首相は会見で「大変重い責任を負った」と述べた。日本の安全と繁栄を、着実に守り抜く政権運営を強く求めたい。

 これから間違いなく、国益や国民益を確保するためにこれまでの約束を見直さざるを得なくなる。その理由を国民にきちんと説明し、躊躇(ちゅうちょ)することなく政策転換を図るべきだ。日本丸の針路は、かじ取りを担う最高責任者の決断と勇気にかかっている。

 内閣の布陣は民主党代表経験者を軸に「老壮青」を配し、安定感に腐心したといえる。政治の流れを変えるという作業に総力で臨む決意を感じ取ることができる。

 ◆安保の基軸継承せよ

 新政権に期待されているのは、「官僚内閣制度」とも呼ばれる官僚機構の肥大化や無駄遣いにメスを入れることだ。

 国家戦略局の菅直人担当相や長妻昭厚生労働相は、省庁や官僚との激しい攻防を経て、薬害エイズ事件や年金記録問題の真相究明に取り組んできた実績を持つ。前原誠司国土交通相は公共事業などのムダを見直す主戦場に立つ。

 その突破力に期待したいが、対決だけでなく、政策にまとめ上げる「解決力」も問われる。

 懸念せざるを得ないのは、国家の基本である外交・安全保障政策だ。「自衛隊は違憲状態」と位置付け、反米色の強い社民党との間で現実的かつ機動的な対応が展開できるのかどうか。危うさがつきまとう。民意は社民党に期待したわけではないだろう。必要に応じ、自民党などとの協力を検討すべきである。

 岡田克也外相も不安感が残る。日米同盟を基軸にするとしながら「対等な関係」を強調している。それが何を意味するかを示す具体的なビジョンは見えない。

 外相は米国に核兵器の先制不使用を求める意向を表明したことがある。米国の核の傘によって日本の平和と安全が守られていることを忘れてはなるまい。言葉をもてあそぶような外交姿勢では、日米同盟を弱体化させかねない。

 鳩山首相はこうした懸念を払拭(ふっしょく)するため、指導力と主体性を発揮し、現実路線に徹すべきだ。就任早々に行う訪米については「信頼感を高めたい」と述べた。強固な同盟関係を確認するとともに、米国からも継続に期待感を示されているインド洋での補給支援活動を終了させる判断が適切かどうか再考してほしい。

 一方では早急に来年度予算案編成に取り組まなければならない。世界同時不況にのまれた景気は底を打ったとはいえ息切れ懸念が出ており、編成作業はスピードが求められる。

 ◆予算編成を遅らすな

 新政権は概算要求を白紙に戻して今月末に再提出させるほか、景気対策が柱の今年度補正予算も抜本的に見直して第2次補正予算を編成するという。作業を一からやり直すわけで難航は必至だが、遅れは許されない。

 民主党は子ども手当の創設や農業戸別所得補償などを掲げ、その財源16・8兆円の大半を予算見直しで捻出(ねんしゅつ)するとした。その手法は一般会計と特別会計の組み替えやムダの根絶などによるが、財源確保額は不透明なままだ。

 例えば補正予算の未執行分から捻出するのも容易ではない。確かに自民党時代の既得権益にからむムダはある。だが、関係する自治体や企業も多く、場合によっては景気の足を引っ張る。

 景気の着実な回復と成長戦略は税収確保面からも不可欠なのに、新政権にはそれが希薄だ。消費税も封印している。歳出を増やすだけで税収が確保できなければ国債に頼るしかない。先進国で最悪の財政はさらに悪化しよう。

 亀井静香郵政改革・金融相は、現行の郵政民営化過程を真っ向から否定しただけでなく、中小企業融資や住宅ローンの返済猶予構想を打ち出す発言をした。この一種の“徳政令”は市場経済を根底から揺るがすといえる。“改革放棄”も決定的となった。政権内の政策調整力が問われている。

 政と官の問題では民主党が自治労など官公労から選挙支援を受けながら、抜本改革ができるのかという疑問点も見落とせない。教育政策でも日本教職員組合(日教組)など特定の団体の意向を反映する政治にならないかどうかを注視していきたい。


東京新聞
鳩山新政権スタート 『説得責任』果たせ
2009年9月17日

 鳩山新政権がスタートし、日本の政治史に新たな一歩を記した。政策実現には説明責任が不可欠だが、国民を納得させる「説得責任」も果たしてほしい。

 澄み渡る青空の下、国会に足を踏み入れた新人衆院議員の初々しく希望に満ちた姿は、新しい時代の到来を感じさせる。

 その一人、薬害肝炎訴訟の元九州原告団代表の福田衣里子議員は国会前庭で「社会保障のしっかりした、希望を失わずにすむ国をつくりたい」と記者団に語った。

 新人はじめ国会議員は皆、国政を志した初心を忘れず、国民の声に耳を傾け続けてほしい。

 歴史を変える重責
 政権交代を果たし、新首相に就いた鳩山由紀夫民主党代表にも、引き締まる一日だっただろう。

 この日の朝、緊張した面持ちで「歴史を変えるというワクワクする喜びと、歴史をつくらなければならない大変重い責任と両方が交錯している」と話した。

 鳩山氏が自任するように、鳩山内閣はその誕生から、日本の政治史を変え、新しい歴史をつくる使命を負った政権だ。

 政権交代可能な二大政党制を目指して衆院に小選挙区比例代表並立制が導入されてから十五年。衆院選で野党が単独過半数を獲得して政権交代を果たすのは戦後初めてであり、それを実現させたのは、自民党政治からの変革を求める有権者の切実な思いである。

 ただ、自民党政治とは違う新しい歴史をつくるといっても、その具体像は描き切れていない。

 鳩山氏は就任後初の会見で「試行錯誤の中で失敗することもある。国民にもご寛容を願いたい」と語った。針路が見えない中、寛容でいられる時間は長くはない。

 鳩山氏は日本をどこに導き、国民生活をどう改善するのか。まずは所信表明などの機会を通じて政治理念を明らかにすべきだ。

 常に「国民目線」で
 各閣僚にも注文がある。政策実現には、関係者はじめ国民に説明を尽くすだけでなく、納得させる労苦を惜しむな、ということだ。

 例えば、七十五歳以上を対象とした後期高齢者医療制度。二〇〇五年衆院選の自民党マニフェストに「新たな高齢者医療制度の創設」が明記され、自民党圧勝で形式上は信任されたが、導入時には激しい反発を招いた。

 厚生労働省や当時与党だった自民、公明両党が導入時、「なぜ七十五歳で線引きするのか」などと反発する高齢者の理解を得る努力をどれだけしたのか。国民に不信が残れば、職責を全うしたことにはならない。

 民主党は〇九年衆院選マニフェストに後期高齢者医療制度の廃止と、医療保険を地域単位で段階的に一元化することを明記した。

 制度の改廃には、導入時と同様の混乱が起きるかもしれないが、国民や関係者から大方の納得が得られる形で進めてほしい。選挙で信任を得たからといって、自民党政権末期のような「上から目線」で強行すべきではない。

 長妻昭厚生労働相の仕事は年金、医療、介護、雇用と幅広い。「消えた年金記録」を追及した「国民目線」を持ち続けてほしい。

 高速道路無料化や八ッ場ダム中止問題を抱える前原誠司国土交通相にも同様のお願いをしたい。

 民主党は無料化で物流コストが下がり、地域経済が活性化すると説明するが、渋滞が増え、二酸化炭素の排出量が増えるとの指摘がある。バスや鉄道など地域の交通体系や料金徴収員の雇用などへの影響も避けられない。

 前原氏は官僚の振り付けに踊ることなく、懸念に一つ一つ丁寧に答えてほしい。それが政治への信頼を得る唯一の道でもある。

 税金の無駄遣い根絶は必要だが、ダム建設を前提に立ち退きに応じ、故郷を捨てざるを得なかった人たちの痛みに思いを至らせない政治が、心に響くわけがない。建設を中止するにも誠心誠意、説明と説得に努めるべきだ。

 マニフェストで掲げた、中学生以下を対象とした子ども手当(一人月二万六千円)や、農家などへの戸別所得補償制度にも「ばらまき」との批判があり、対象外の人たちは不公平感を訴える。

 政策の背景にある理念や哲学が明確でなければ、国民の大方の納得は得られないだろう。担当大臣には説得責任が課せられていると心得てほしい。

 自民は監視機能を
 最大野党・自民党の存在も重要さを増している。

 鳩山政権が「数の力」で国民の望まない政策を押し通そうとした場合、それをチェックし、待ったをかけるのは自民党の役割だ。

 そのためにも、総裁選での論戦を通じて党再生の道を探り、一日も早い出直しを期待する。



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