09・5・26 北朝鮮核実験を受けての各紙社説

朝日新聞
北朝鮮の核実験―米中の連携で暴走止めよ


 北朝鮮が「地下核実験を成功裏に実施した」と発表した。それによる地震波を各国が探知した。爆発の本当の規模などはっきりしない点は多いが、06年10月の実験に対する国連安保理の決議を無視し挑戦する行動だ。

 日本の安全保障にとってはもちろんのこと、世界の安全保障や平和にとってもゆゆしき事態である。

 日本政府などの要請で安保理は緊急会合を開き、対応を話し合う。国連をはじめ核の拡散防止を課題とする国際機関の存在意義が問われている。

■繰り返された暴挙

 それにしても、「またか」という思いが募る。

 前回の実験があった2年半前からのことを思い起こしたい。弾道ミサイルの発射実験をしたり核実験をしたりして、危機的な状況をつくり上げる。国際社会を脅し、譲歩を迫る。北朝鮮の体制護持を最優先にした無法なやり方はまったく変わらない。

 核実験に直面した当時のブッシュ米政権は対話路線に大きくカジを切り、北朝鮮に核を放棄させようと、あの手この手で取引してきた。そんな米国の足元を見たこの再核実験だ。これまで北朝鮮を核放棄に向かわせる重要な装置と期待されてきた6者協議への懐疑論も強まるだろう。

 だが、いかに脅威であるからといって、軍事力で解決を目指すことが現実的でないことは米国や中国、日本をはじめ関係国が共有している認識だ。であれば、国際社会は忍耐強く知恵を絞り、北朝鮮の基本的な政策転換を生み出すための努力を外交的手段で続けなければならない。

 この時期に再び核実験に踏み切った北朝鮮の狙いは何なのだろうか。

 一つは、本格的な核武装国家としての存在感を高めるために核技術を向上させ、誇示したいということだろう。朝鮮戦争を最終的に終わらせ、米国との関係正常化を目指すためにも、「核」をめぐる交渉に米国を引き出すことが北朝鮮の年来の狙いだ。

■不拡散へ重大な挑戦

 オバマ米政権が誕生して4カ月になるのに、北朝鮮からすればクリントン国務長官をはじめ政権の中枢からは北朝鮮との交渉を実際に動かしたいという熱意が感じ取れない。核をめぐってはロシアとの交渉やイラン問題、地域紛争では中東やアフガニスタンに精力を振り向けている。そんな焦りが北朝鮮の指導部にあるのかもしれない。

 ここにきて矢継ぎ早に危機カードを繰り出す動きには、北朝鮮の政権内の事情が絡んでいるとも見られる。

 金正日総書記は健康不安を抱え、「金王朝」の将来は楽観できない。権力継承に備えて強硬路線で国内の体制を引き締め、同時に米国との取引を急ぐ。そんな思惑があるとの分析だ。

 北朝鮮の相次ぐ核実験は、地域の今日の安全を脅かすにとどまらず、人類の明日を危うくしている。核不拡散条約(NPT)体制を一層空洞化させかねないからだ。

 4月の北朝鮮のミサイル発射実験のその日、オバマ大統領はたまたまプラハで「核のない世界」を目指すという歴史的な演説をした。来年のNPT再検討会議に向け、核拡散抑止への環境が整いつつあると見られていた。

 そこにこの実験である。世界の流れに冷や水を浴びせた北朝鮮の行動に、重ねて強い憤りを覚える。

 北朝鮮は寧辺の核施設を監視してきた米国と国際原子力機関(IAEA)の要員を国外に追い出した。北朝鮮のやりたい放題になっている。

 北朝鮮に再び核実験をしないよう求めた06年の安保理の制裁決議には、中国、ロシアも賛成した。その中国は6者協議の議長国でもある。北朝鮮の無謀な行動を止められなかったことについて、中国に対する失望は深い。

■日本も積極的に動け

 中国には中国の外交判断もある。北朝鮮に対して強い姿勢に出れば、北朝鮮がより孤立し、中国の国益にも世界の安全にもむしろ良くないということだ。とはいえ、安保理では北朝鮮に向けて強いメッセージを出す方向で、制裁の徹底実施や追加措置などの協議に主導的な役割を担ってもらいたい。

 オバマ政権にとっては、これから対話に取り組もうとしていた北朝鮮から早々と出ばなをくじかれた形だ。政権の対北姿勢への批判が米国内で強まる可能性もある。

 だが、核の拡散による恐怖から世界を救い、閉鎖的な独裁国家を世界に開かれた国にするという大きな目標にとって北朝鮮は最大の試金石のひとつだ。北朝鮮の変化を促すことができるのは何と言っても米国だ。

 中国の役割もはっきりしている。米国とともに東アジアの長い目で見た安全保障がどうあるべきかを考えてもらいたい。世界同時不況の中で米中の戦略的な連携が重みを増している。朝鮮半島の安定はそれを生かすべき最たる領域ではないか。

 日本は、被爆国として「核のない世界」への取り組みに参画しようとしている。同時に、北朝鮮の核実験や拉致問題を深刻な脅威として受け止めざるをえない立場だ。現実には日朝の直接協議で事態を動かせる可能性は、いまは残念ながら乏しい。

 米中の連携を促し、韓国とともに地域の安全確保へ積極的に後押ししていきたい。 


毎日新聞
北朝鮮が再核実験 安保理は断固たる対応を


 北朝鮮が「再度の核実験に成功し核兵器の威力をさらに高めた」と発表した。各国の観測データは、十分な成功ではないとの見方が強かった06年の実験より、はるかに強い爆発が起きた可能性を示している。

 発表通りの核実験なら国際社会のルールを無視した暴挙であり、決して容認することはできない。先月の弾道ミサイル発射の際には「人工衛星を打ち上げた」と偽装の努力もしたが、今度はそんな遠慮さえない。前回の核実験を受けた国連安全保障理事会の制裁決議への違反には、一点の疑問の余地もない。

 ◇明白なルール違反
 麻生太郎首相は「断じて容認できるものではない。まずは安保理から始める」と語り、韓国の李明博(イミョンバク)大統領との電話協議では国際社会が北朝鮮に厳しく対応すべきだという認識で一致した。日米韓の連携も改めて確認した。もっともなことである。挑発的なルール違反に、安保理は断固たる姿勢で臨むべきだ。

 ただ国連レベルでの対応には限界もある。北朝鮮の核問題を扱う6カ国協議は行き詰まっているが、結局はその構成国が実質的な利害関係者と言える。そして事態を打開するには、北朝鮮の意図を冷徹に見定め、的確な対策をとる必要がある。

 北朝鮮は東西冷戦終結に伴うソ連・東欧社会主義圏の崩壊を機に、体制の生き残り戦略を大転換させた。その核心は、米国との関係正常化による安全保障である。クリントン政権時代の北朝鮮に有利な「米朝枠組み合意」や、ブッシュ政権末期に獲得したテロ支援国家指定の解除は、そうした戦略の一環と言える。

 北朝鮮はオバマ政権にさらなる譲歩を期待した。しかし新政権の対北朝鮮政策やスタッフの陣容は整備が遅れ、早期の米朝直接交渉に消極的な姿勢が続いている。北朝鮮にとっては当て外れであり、最近はオバマ政権への直接的な非難を始めた。

 北朝鮮のミサイル発射や核実験には、もちろん核ミサイルという戦略兵器確保の狙いがあり、国内向け宣伝の意味もある。最近の強硬一辺倒の動きは、金正日(キムジョンイル)総書記の健康問題や後継体制の準備に関連したものとの見方も有力だが、外交的には「早く交渉せよ」という対米メッセージの意味合いが強い。

 米朝間では、北朝鮮に抑留中の米女性記者2人の解放について水面下の接触が行われている。場合によっては、これが核とミサイルを巡る交渉に発展する可能性もあろう。

 ただ米国にとって北朝鮮はさしたる脅威ではない。核兵器がテロ集団の手に渡るような事態を封じることを条件に、北朝鮮の核保有を黙認するのではないか。そんな観測も流れている。北朝鮮の脅威に直面している日本としては、とうてい受け入れられない。今回の実験に関する追跡調査によって、北朝鮮の核兵器の能力が向上したという事実が確認されれば、なおさらである。

 オバマ大統領は究極的な核兵器廃絶を目指す方針を示した。それならば、まず北朝鮮の核の脅威を完全除去するという具体的な目標達成に尽力してほしい。同盟国日本の懸念だけが問題なのではない。北朝鮮の核保有を小規模であれ事実上認めるような事態になれば、他の国も同様に国際ルールを無視して核開発に走る危険を排除できまい。

 ◇狙いは対米関係改善
 改めて言うが、北朝鮮の最大の狙いは米国との関係改善なのだから、この状況を活用して北朝鮮を非核化に導くことも不可能ではないはずである。6カ国協議の枠組みを再稼働させる努力も必要だ。

 一方、中国もこれまで以上に強い姿勢で対処すべきである。北朝鮮はますます中国への経済的依存度を高めている。食糧、エネルギー面で、中国の助けなしには生存できない国と言える。ところが中国はこれまで北朝鮮への強い影響力を持たないと説明してきた。

 実際には、北朝鮮へのエネルギー供給を調節するといった方法で圧力をかけたことがあるようだ。表立って北朝鮮の体面をつぶし、事態を悪化させる必要はない。ただ、国際ルールを無視すれば利益より損害が大きいという事実を理解させるべきである。説得の役割を果たせるのは、さしあたり中国しかあるまい。

 北朝鮮は「先軍政治」と称する軍事優先の統治を掲げ、先の最高人民会議では憲法の一部改正などを行った。内容は公表されていないが、金総書記が委員長を務める国防委員会の権限を増強したようだ。公式報道機関は、日本や韓国に対する激越な非難を連日のように続けている。

 異様な体制ではあるが、核兵器を使えば北朝鮮も破局を迎える。日本政府も国民も北朝鮮の暴挙に過剰反応せず、米中や韓国との協調を重視しつつ対応していくこと。それが当面、最善の選択肢であろう。

読売新聞
北朝鮮核実験 度重なる暴挙に厳格対処せよ(5月26日付・読売社説)
 北朝鮮が2度目の核実験を強行した。

 先月5日には、国際社会の警告に逆らって、弾道ミサイルを発射したばかりだ。核兵器の小型化に通じる核実験の実施は、核ミサイルの早期獲得に執念を燃やす北朝鮮の姿勢を鮮明にした。

 3年前の最初の核実験強行によって、世界はすでに「危険な新たな核の時代」に入った。北朝鮮の度重なる挑発行動により、北東アジア地域の安定は一層損なわれ、緊張は一段と激化している。

 ◆安保理で制裁強化を◆

 とくに、北朝鮮が配備ずみのノドン・ミサイルの射程内にある日本にとって、事態は深刻さを増した。政府が直ちに国連安全保障理事会の招集を求めたのは当然だ。北朝鮮の暴挙には、厳しく対処していかなければならない。

 今回の核実験は、最初の核実験後に安保理が全会一致で採択した決議1718への明白な違反だ。北朝鮮は、「核実験や弾道ミサイル発射の中止」を求めた決議を、相次いで蹂躙(じゅうりん)したことになる。

 北朝鮮は先月、安保理が弾道ミサイル発射を非難する議長声明を採択した直後、「不当千万」と逆に安保理を非難した。

 みずからの違反を棚に上げた詭弁(きべん)である。

 さらに、安保理が北朝鮮企業3社を制裁対象にすると、「謝罪と制裁の撤回」を求め、応じなければ「核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験」を行うと宣言した。

 その延長線上に、今回の核実験がある。核実験後、短距離ミサイルも3発発射した。安保理が協議入りすれば、長距離弾道ミサイルも発射する、とでも脅したつもりなのだろうか。

 北朝鮮が野放図に進める核ミサイル開発をどう阻止するのか。国際社会は、冷静に判断し、緊密に連携して対処する必要がある。

 安保理の選択肢には、制裁を強化する決議の採択がある。3年前の決議1718は、その後、北朝鮮が6か国協議に復帰したことで制裁が徹底されなかった。先の弾道ミサイル発射でごく一部の制裁が実施されたが、現状のままでよいというわけにはいくまい。

 日本は3年前、やはり安保理の一員として米英仏とともに制裁決議の採択を主導したように、今回も先頭に立って、安保理で制裁強化決議の採択を目指すべきだ。

 麻生首相は韓国の李明博大統領と電話で、日米韓の連携を確認、安保理で「厳しい対応」を取るべきだとの認識でも一致した。

 ◆中国の役割は重い◆

 日本政府は独自の追加制裁も検討することにしている。ただ、それだけでは、北朝鮮は痛痒(つうよう)を感じまい。国際的な包囲網の実効をあげることが肝要だ。

 現状では、北朝鮮が経済的に依存する中国の役割が、北朝鮮に核放棄への圧力をかけるうえできわめて重い。首相は、慎重な態度を示すと予想される中国、ロシアに積極的に働きかけるべきだ。

 6か国協議は、交渉を通じて、北朝鮮の核放棄の実現を目指そうという枠組みだが、2度目の核実験強行により、事実上、その存在意義は失われた。

 北朝鮮が、6か国協議つぶしを狙っていたのは明らかだ。事実、先月には、安保理非難とあわせ、6か国協議に「二度と絶対に参加しない」と言明した。核放棄ではなく、核兵器保有の既成事実化が北朝鮮の本音だ。

 だが、日米韓中露の5か国にとって、北朝鮮の非核化という共通の目的が失われたわけではない。核保有の既成事実化を決して許さず、実効性ある措置をとることが5か国の喫緊の課題だ。

 北朝鮮が直接対話を望むオバマ米政権の責任はきわめて大きい。核を持つ北朝鮮との正常化はあり得ないことを肝に銘じさせ、核廃棄へ向かわせるよう、毅然(きぜん)とした態度を貫いてもらいたい。

 北朝鮮は、使用済み核燃料棒の再処理を開始した、として核兵器用プルトニウムの増産を示唆している。拘束した米人ジャーナリスト2人の裁判開始を予告し、韓国とも開城工業団地の契約無効宣言で緊張を高めている。

 ◆揺れる金正日後継問題◆

 一連の“超強硬”姿勢は、昨年以来、健康不安が続く金正日総書記の後継体制作りと深く関係している可能性もある。こうした中で進められる核ミサイル開発の危険性に注意しなければならない。

 核を持たない日本にとって、米軍の核抑止力こそが北朝鮮に核使用を思いとどまらせる唯一の対抗手段だ。いわゆる「核の傘」が確実に機能するよう日米同盟関係の信頼性を確保する必要がある。

 ミサイル防衛(MD)システムの一層の充実も欠かせない。迎撃ミサイルの着実な配備はもちろん、米国との情報共有や、相互運用性の向上など、システムの実効性を高めることが重要だ。

(2009年5月26日02時10分 読売新聞)

産経新聞
【主張】北朝鮮の核再実験 断固たる制裁発動せよ 弾頭小型化に備えはあるか
2009.5.26 03:58
 
このニュースのトピックス:主張
 北朝鮮が2006年10月の核実験に続き、「地下核実験を成功させた」と発表した。先月、国際社会の制止を振り切って強行した長距離弾道ミサイル発射に次ぐ暴挙だ。世界の平和と安全を正面から脅かす重大な挑戦である。

 東アジア地域の脅威を高め、核・大量破壊兵器拡散の危険も増大させた。06年以来の一連の国連決議に対する明確な違反を断じて許してはならない。日本は米韓などとともに国連安全保障理事会の緊急協議に力を結集し、国際社会の総意をまとめて速やかに厳しい制裁を発動すべきである。

 一方、北の核再実験は日本の防衛に重大な問題を突きつけた。長距離ミサイル発射と同様に、日米同盟の抑止力が機能不全に陥っている現実をみせつけたからだ。ミサイルと核の脅威増大への備えをどうするかこそ、国の総力をあげて取り組むべき課題である。

 北は先月の「衛星打ち上げ」を名目とした長距離ミサイル発射に対する安保理議長声明を拒み、6カ国協議離脱と核・ミサイル実験の再開を予告していた。06年7月のミサイル発射、10月の核実験と同じ行動パターンで、国連決議を無視した不遜(ふそん)な対決姿勢を改めないのは大きな問題である。

 ≪米は包括政策固めよ≫

 だがそれ以上に、前回の核爆発規模が1キロトン以下で「実質的に失敗」との見方があったのに対し、今回は核弾頭小型化技術の確立を狙ったとの観測もある。弾頭を小型化してミサイル搭載が可能になれば、脅威は飛躍的に増大し、世界的な核・ミサイル拡散の危険も高まるのは明らかだ。

 とりわけ政権交代したばかりのオバマ米大統領は、4月の「核なき世界」を掲げた演説の当日に弾道ミサイルを発射されたのに続いて、あからさまな挑戦的行動を再び突きつけられた。

 核実験によって、核問題解決をめざす6カ国協議再開の期待は一層遠くなった。こうなった背景には、米国の対北政策が迷走状態にあることと、6カ国協議のメンバーで安保理常任理事国でもある中国、ロシア両国の非協力的な姿勢の2点が挙げられよう。

 北は05年以降、核の検証や核施設無能力化の約束を果たそうとしなかった。にもかかわらず、ブッシュ前米政権は、北の行動や経済を締めつける効果を示した金融制裁とテロ支援国家指定の外交カードを2つとも口約束で解除してしまった。これは重大な失敗といわざるを得ず、反省すべきだ。

 6カ国協議の継続方針を掲げたオバマ政権も、包括的な対北政策はまだ固まっていない。それなのに、クリントン国務長官が指名したボズワース担当特使は「金融制裁もテロ支援国家指定も再発動の予定はない」と公言、北に「圧力はかけない」と教えるような言動を重ねてきたのは遺憾である。

 ≪中露は責任を果たせ≫

 中露の姿勢にも問題が多い。北はミサイル技術や偽ドル、偽たばこなどあらゆる不当な手段で外貨獲得を図っている。国連は安保理決議1718などを通じて制裁強化を求めてきた。しかし、4月のミサイル発射時もそうだったように、中国とロシアは制裁の履行と強化には一貫して消極的で、国連決議の義務を十分に果たしているようには見えない。

 オバマ大統領が「明確な国際法違反」と述べたのをはじめ、日韓など各国が北を厳しく非難しているのは当然だ。しかし、北の行動を改めさせるには、明確で断固とした制裁措置の実行が不可欠である。米国は金融制裁とテロ支援国家指定の再発動を真剣に検討すべきであり、中露は世界の平和と安全を担う重大な責任を自覚し、義務を果たすよう求めたい。

 日本の防衛力はこれまで「専守防衛」を基本とし、攻撃能力は米軍に委ねてきた。日本は自ら報復能力を持っていないが、自衛力の一環として北の核・ミサイル施設に対する先制破壊などの抑止能力を整えるべきだ。

 同時に、日米同盟の強化も必要である。自衛隊と米軍の連携に不可欠な集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈の改定を急ぐとともに、米国の「核の傘」に安全を委ねる日本のあり方に関する議論も必要かもしれない。最低限、核抑止がどの程度機能しているかを日本政府は検証しなければならないだろう。

 国連の場での制裁論議や日本独自の制裁強化もさらに検討する必要がある。そうした外交的対応と同時に、防衛・安全保障のあり方の検討も怠ってはならない。

東京新聞
北朝鮮がまた核実験 国際社会への挑戦だ   
2009年5月26日

 北朝鮮がまた核実験を行った。先のミサイル発射に続いての暴挙だ。国際社会に挑戦するつもりか。失うものの方が大きいことを知らせるときだ。

 「自衛的核抑止力を強化するため、いま一度の地下核実験を成功裏に行った」

 北朝鮮は二十五日の核実験をただちに報道した。

 二〇〇六年十月以来二回目になる。先月の弾道ミサイル「テポドン2号」の発射実験に続いての軍事的な挑発だ。

 朝鮮半島の緊張を高め、北東アジアの平和と安定を損なう行為は、到底容認できない。

 国連で断固たる意思を
 前回、追加的な核実験をしないよう求めた国連安保理決議にも明らかに違反する。早速、国連安保理の緊急会合が開かれる予定だが、国際社会は断固とした意思を北朝鮮に示す必要がある。

 四月のプラハ演説で、オバマ米大統領は「核廃絶」への強い意欲を示し、ロシアとの戦略兵器削減交渉や、核拡散防止条約(NPT)体制強化による核不拡散への取り組みも始まった。

 今回の実験は、オバマ政権の模索に冷水をかけ、せっかくの国際的な意思を逆なでするものだ。

 なぜ、いま核実験なのか。

 直接の動機は、先のミサイル発射に厳しく対応した国際社会への反発だ。国連安保理の議長による非難声明に対して、北朝鮮は二回目の核実験やミサイル試射、核施設の再稼働などの対抗措置をとると警告、北朝鮮の核問題を扱う六カ国協議からの離脱も表明した。

 その背景には、対米関係が思うように進まない焦りがある。

 「わが国への敵視政策に変化がないことが明白になった」

 今月に入って、北朝鮮はオバマ政権への批判を始めた。大統領は選挙中「協調外交」を掲げ、北との対話にも積極的だった。

 米国の体制保証が悲願
 ところが、就任から百日を過ぎても、直接折衝に応じない。それだけでなく、国連安保理での対北非難の先頭に立った。

 金正日総書記にとって、最大の軍事的脅威である米国による体制保証が悲願なのにである。

 北朝鮮は、故金日成主席の生誕百周年である二〇一二年に「強盛大国」を実現して、大々的に祝う計画を立てている。

 軍事、思想、経済分野での大国という目標まであと三年。特に経済は破綻(はたん)寸前にあり、国民の不満・不平もたまっている。周辺国の支援なしに立て直しは不可能だが外交的孤立は深まるばかりだ。

 閉塞(へいそく)状態を打ち破る唯一のカードが「核」であり、国際的に「核保有国」として認知されることだ。そうすれば、米国とも対等に対話できると考えている。

 もうひとつ気になるのは、金総書記の健康状態だ。

 先月、北朝鮮のメディアは総書記の激しくやせた姿を公表した。狙いは不明だが、独裁体制に不可欠なカリスマ性を損なう恐れが大きい。それを補うため、内外に強硬姿勢を誇示したいのだろう。

 最近、「ポスト金正日」の情報が漏れてくる。後継体制の確立は独裁体制維持の絶対条件だが、残された時間は長くない。

 内政外交にわたるさまざまな焦りが浮き彫りになる。

 しかし、核実験は結果として逆効果と北朝鮮は認識すべきだ。

 対米関係にしても、米国が脅しに屈する形で対話に応じるはずもない。対北政策はむしろ厳しさを増すに違いない。

 周辺国をはじめ、国際的な非難を招くのは必至だ。国連安保理でもさらなる制裁などより厳しい措置がとられるはずだ。

 日本も、国連での制裁強化など「断固たる対応」に取り組み始めた。効果的な北朝鮮包囲網をつくるため外交努力をすべきだ。

 これから各国の協議、折衝が行われるだろうが、特に米国と中国には注文がある。

 米国のブッシュ前政権は、前回の核実験で急に対話路線に切り替え、「核放棄」の担保もないまま金融制裁やテロ支援国家指定の解除を行った。これが北朝鮮の揺さぶり戦術に勢いをつけた。

 中国の責任も大きい。北朝鮮の貿易の七割以上を中国が占め、食糧やエネルギーの依存度はさらに高い。生殺与奪を握っている。

 腰を据えた対応を
 従って、中国抜きの経済制裁は尻抜けになる。緩衝地帯としての北朝鮮が必要だとしても、大量破壊兵器の開発は、中国の安全保障や経済発展の大きな障害だ。

 北朝鮮は、これからも独裁体制強化や金総書記の威光を内外に示すため、核の脅威をさらに高める可能性が高い。

 周辺国は、北朝鮮の揺さぶりや瀬戸際戦術に乗せられないよう腰を据えて対応する覚悟がいる。



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