民主党代表選 候補者討論会詳報 2009・5・15

民主党代表選に立候補する鳩山由紀夫幹事長と岡田克也副代表は15日午後、東京・内幸町の日本記者クラブで開いた公開討論会に出席し、内政、外交問題などについて論戦を交わした。詳報は以下の通り。

              ◇

<第1部>

【基本的主張】

 −−まず候補者の基本的な主張ということで、代表になったら民主党をどうするのか、あるいはどんな政権を目指すかを3分ずつ話してほしい。発言の順番は50音順で、岡田さん、鳩山さんでお願いしたい。まず岡田さんから

 岡田克也副代表「みなさん、こんにちは、岡田克也です。今回のこの突然の代表選挙、私は次の総理を選ぶ、そのための前哨戦、予備選であるというふうに思っています。まもなく予想される総選挙、その前にチャレンジャーである民主党のトップを決めなければなりません。そういう思いをもって、次の総理を選ぶ選挙であるという思いをもって、しっかりと頑張っていきたいと思います」

 「ここ数カ月間、民主党のその、国民のみなさんから見た場合の民主党というものは、少し大丈夫かということで、国民が離れつつあると、残念ながらそういう状況だと思います。そういう中で国民のみなさんに再度、民主党に対する期待感をもっていただき、そして総選挙で政権交代をするための大事な選挙であるというふうに位置づけております」

 「政策は実は民主党の政策ですから、そう大きな違いはないという風に思います。具体的に後から申し上げたいと思いますけれども、いくつかの基本的な考え方の違いはあったとしても、大きな方向としては一致しているという風に考えます。私はこの4年間、代表を辞めてから全国を歩き、そういう中でこれだけの豊かなはずの日本が、現実に生活をしておられる方々から見て、将来に希望がない、そして日々の生活があまりにも厳しい、そういったお声をたくさん聞かせていただきました。政治ができることは、そうたくさんあるわけでは実はないと思います。政治が全部やれるわけではありません」

 「しかし、頑張っている人たちが、より幸せになれるように、その後押しをしてあげる。それが私は今政治にもっとも求められていることではないかと、そういう風に考えております。政権交代をして、そして、もうすでに行き詰まっている自民党政治を終わらせ、民主党政権にして、将来に向かって希望の持てる、そして今の生活、安心感の持てる、そういう日本を懸命に形作っていきたいと思いますので、なにとぞよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました」



−−それでは鳩山さん、お願いします

 鳩山由紀夫幹事長「国民のみなさん、こんにちは。民主党の鳩山由紀夫でございます。いま岡田さんからお話がありましたように、私どもの戦う相手は、お互い同士というよりも、むしろ麻生内閣、麻生政権であります。あるいは別の言葉で言えば、自公連立政権、古くなった政権の体質を大いに大掃除をしなければならない。その改革を行うための戦いだ、そのように考えております」

 「私は政権交代を果たさせていただいた後の日本の姿を、愛のあふれた、そんな社会に築き上げてまいりたいと思っています。ただ、これは単なる理念ではありません。私の住んでいる室蘭、あるいは日高、大変経済が厳しいところでございます。昨年、あるおばあちゃんにお会いしました。そのおばあちゃんは、灯油が高くなって、このままじゃあ冬が越せない、だからあなたと会うのも今年が最後だと、そう言われたときに胸が詰まりました。これが今の皆様方のお暮らしではないかと、そう思ったときに、何としても政治を変えなければならない」

 「一方で、のうのうと暮らしている方々がいる。官僚と政治家の結託の中で豊かな暮らしというものが保証されている人たちも一方でいる。そこに大きな無駄遣いがある。私たちはこの無駄遣いをまずなくさせる。官僚の天下り、渡り、そういったものをなくさせていきながら、本当の意味で公平、公正な社会、喜びあえる愛のあふれる、そんな社会を築いていくために、いま官僚社会から国民のみなさんが主役になる政治を作り出すために民主党ががんばっていかなきゃならない、そう思っています」

 「国難のときに、民主党も困難のときを迎えていますが、民主党も脱皮をするとき、そしてさらに国民の皆様方に新しい政治を届けたい、そんな思いで立候補を決意をいたしました鳩山でございます。どうぞよろしくお願いをいたします」

−−続いて、候補者同士の討論をお願いしたい。それぞれ持ち時間10分間ずつ渡すので、その中で私はこう思うが、あなたはどう思うか、あるいは、あなたはこう言っているが、おかしいのではないかというように自由に論戦を仕掛けてほしい。テーマは自由だが、答える側の発言も相手の持ち時間の中にカウントする。できるだけ簡潔に答えて、テンポよく議論が進むようにお願いしたい。まず鳩山さんから岡田さんに論戦を挑んでほしい

【小泉構造改革の評価】

 鳩山氏「一緒にマニフェスト(政権公約)を作ってきた仲間でありますから、違いを際立たせるということは、なかなか難しいかもしれませんが、あえていろいろとお聞きしたいと思います。岡田さんに、小泉構造改革というものをどのように考えておられるのか。例えば郵政民営化、岡田さんが代表の時に、その戦いがございました。民主党は敗れ去りましたが、しかし結果として地域が崩壊の憂き目になっております。その新自由主義というものの総括というものをお願いしたいと思います」

 岡田氏「はい、ありがとうございました。私は新自由主義という言葉は中身はさまざまですので、あんまり定義から入っていかない方がいいという風には思います。そして小泉構造改革の評価ですが、評価すべき点はないわけではありません。例えば、不良債権の処理を比較的迅速に進めたこと、あるいは景気が悪いからといってやみくもに公共事業を増やすということはやらなかったこと、こういった点は従来の自民党にないところですから、私はそれなりの評価をしております」

 「しかし、多くの改革が、ほとんどが当初の目的とは違い、中途半端に終わり、そして弱いところにしわ寄せがいったという意味では、小泉構造改革は私は落第点だという風に考えているわけであります。例えば地方分権にしても、三位一体改革といいながら、地方に行くお金は減りました。しかし権限はまったく地方には来ませんでした。そういう結果、いま地方の疲弊があります」

 「郵政の問題も、私は民営化は必要だという風に選挙の際にも述べました。しかし、小泉(純一郎元首相)さんの民営化は、具体的なプランがない。いまでも私は本当に銀行や簡保が成り立つのか、そのことは疑問に思っています。そして民主党が強く主張した地域のセーフティーネット、これも鳩山さんおっしゃるように、ずたずたになってしまいました。そういう意味で極めて中身が十分でない、そういう改革であったと総括しています」

【地方分権】

 鳩山氏「ありがとうございます。この郵政民営化という部分に関して、大変な嵐がわれわれに襲いかかってきたのが前回の選挙でございました。私は結果とて地域がずたずたにされてしまったと。その原点は、やはり新自由主義の弱肉強食型の経済というものを、信奉しすぎてしまった小泉改革ではなかったかと、そのように総括を申し上げたいと思っています。いま岡田さんから、地域、地方分権の話がございました。岡田さんは、ぜひ総理になるという過程の中で、この地方分権、地域主権というものを、例えば1期4年の間にどのぐらいまで進めたいと考えておられるんでしょうか」

 「私はこの地域主権というもの、なかなか国民のみなさんには言葉が難しいものですから、理解をされていかれないところもあるんですが、地域のことはできる限り地域でできるような社会にする、それが究極の行政改革だと思っていまして、それをやるために私は民主党を作ってきたと、そんな風に思っております。ぜひ地域主権を1期4年なさる場合に、どこまでなさるかという話をお聞かせいただければと思います」

 岡田氏「はい。ぜひ鳩山さんのお考えも聞かせいただきたいと思いますけれども、私の考える地域主権というのは、基礎自治体重視です。基礎自治体というのは市町村です。ですから、まず基礎自治体でできることは基礎自治体に任せる。基礎自治体でできないことは、その上にある都道府県、ないしは将来、道州。そして、それでもできないことを国がやるということであります」

 「そういった基本的な考え方に立って、基礎自治体を中心に権限と財源を移していかなくてはなりません。で、ここは民主党の中でもすでに決めていることでありますけれども、個別の補助金をやめて、そして一括交付金のような形で基礎自治体になるべく移していく。その一括交付金、色の付いていないお金を地方が自分たちの判断で使っていく。そういう形で、私、4年間でそこまで何とかしたいものだという風に思っています」

 「同時にもう少し基礎自治体の規模も拡大していきたいと思いますが、地方分権を議論する際に、強制的に合併しなさいと言うのは地方自治と逆の形になりますので、私はそこのところは誘導策はあっていいと思いますが、無理に例えば300なら300に絞ってしまうという、そういうやり方は向かないのではないかと考えているのですが、いかがでしょうか」

 鳩山氏「すべて岡田さんの思い、私の思いと一致しておりまして、これはディベートにならないかもしれませんが、民主党のPRとしては大変にありがたい話でありまして、私は地域主権の話が、なかなかトップに岡田さんの今回のお話の中に、出てこなかったもんですから、あえてお伺いしたんです。そこまで言っていただいたということは大変ありがたい話だと思います。特に私もいわゆる補完性の原理といいまして、地域のことは地域でやると、地域でできないものだけ、より大きな自治体に任せると。本当にそれでもできないことだけ、国がやるという国家と地域のあり方に変えていかなければならない」

 「すなわち、地域の方が力をもつと。国家の方は、むしろナショナルミニマム的なものだけに済ませようじゃないか。あるいは外交、安全保障、そういったものだけでかまわないんだ、というぐらいにすれば、私は今、あまりにも無駄遣いの多い官僚主権の時代から、地域主権のまさに時代、作り上げていくことができると思ってまして、それを、何としても民主党が1期4年、踏ん張っていくなかで作り上げていきたいと考えています」

【挙党態勢】

 鳩山氏「まだ残り時間が若干あろうかと思っておりますが、私の考えとすれば、そのためには官僚、いわゆる脱官僚というものを行っていかなければならないわけでありますが、それを行っていくためには、当然のことながら、党としてバラバラ感があってはならない。挙党態勢というものを作り上げていく必要があります。どうやって岡田さんなら挙党態勢をまず作り上げていくかというところをお示し願いたい」

 岡田氏「これは簡単なことで、この選挙は、代表選挙が終わった後、鳩山さんと私がしっかりと力を合わせて政権交代を目指していくということだと思います。もちろん、2人だけではなくて、小沢さんや菅さんや多くのわが党のリーダーたちが全員野球で政権交代を目指していく。そうすれば必ず挙党態勢であり、そして政権交代を実現するというふうに確信をしております」

鳩山氏「その確信をぜひ実現をしていかなくてはならないと思っております。まさにそこのところが、実はメディアのみなさんから狙われやすいところでありまして、親小沢だとかあるいは反小沢とかいうことを言えば言うほど、ある意味で小沢代表という存在感が大きく、大きくなっていくわけでございます。今むしろそんな次元の話をわれわれがしているつもりはありません。本当の意味で挙党態勢、志というものが同じなわれわれが一つに向けてすなわち、政権交代を果たす、その先に脱官僚とか地域主権とか、そういったものを実現させていくために大きな戦いをしていく。そのためには党内の結束力というものが何より必要だということを、私もそう思っておりますので、あえてお聞きをした次第であります」

 −−あと1分20秒であります。

【政治とカネ】

鳩山氏「あっ、そうですか。ありがとうございます。それでは最後にこれは岡田さんが今日までご苦労されてこられたいわゆる政治とカネのことに関して、岡田さんの今日までのリーダーシップは私は高く評価を申し上げているわけでありますが、やはり企業団体献金、これはパーティー券も含めてということ、岡田さん盛んに力説をされておりましたが、それを3年以内に私たちは完全に禁止をさせなければならない。それぐらいに思っておりますが、それに対してきっと同じ思いを述べていただけると思っておりますが、どうぞご見解を述べていただければと思います」

岡田氏「同じです。同じなんです。しかし、そのことと切り離して申し上げますけど、やっぱり個人献金を増やしていくための仕組み作り、そしてわれわれの努力、そういったことは、それがなければ3年以上先に延ばすということでは、これはありません。切り離して考えなければなりませんが、しかし、このまま放置いたしますと、例えば民主党の収入は、今でもほとんど少ないんですが、90数%多分税金なんですけど、100%近く税金になってしまいます。個人献金はほとんどありません。きちんと個人献金も増やしていく。そのことによって政党としての税金頼みではない。自立性を高める。できれば半分以上は自分たちで集めた個人献金。そういう政党にぜひしていきたいものだと考えています」

鳩山氏「自民党と民主党の最大の違いではないかと、そう思っておりますので、あえて2人で強調させてもらいました」

 −−時間になりました。ありがとうございました。続いて岡田さんにお願いしますが、同じ党の大幹部でありますので、違いを際立たせるというのはなかなか難しいかもしれないが、一連のテレビに出演して、私でないと政権交代できないと、それがなぜかということも含めてできるだけ違いを際立たせるディベートをお願いします。それでは10分お願いいたします」

【消費税】

岡田「はい。ここは政策の議論ですから若干、今のご期待に応えられるか分かりませんが、少し具体的な話をいくつかしたいというふうに思います。まず消費税の話です。私あんまり消費税の話がこの中で焦点が当たるのはいかがなものかとは思いますけど。ただ、鳩山さんおっしゃった中で、多分4年間ですね。つまり総選挙で政権を取った後、4年間、消費税の議論すらすべきではないという趣旨のことをおっしゃったと思うんです」

「私も現時点でこの経済状況で消費税を上げるなんてことはありえない。こう思いますし、4年間、おそらくそういうことにはならないだろうという風に思います。今の経済の状況は、簡単なファクトではありません。ただ議論すらしないというのは、いかがなものかという風に思いますが。いかがなんでしょうか。どういうことなんでしょうか」

鳩山氏「はい。実はこの議論ができているという意味で、基本的に民主党の中で、この議論は激しくやったわけでございます。すなわち、消費税は私どもは基本的にいわゆる年金の基礎的な部分、最低保障年金に充当するということに決めているわけでございます。そうであるとしたときに、今すぐに来年から全部新しい年金体系に変わるとしたら、消費税を上げなければなりません」

「しかし、私どもは当然のことながら、来年すぐに上げれば、そのことによって今まで全然、年金を納めていない、払っていない人が、突然来年から全部受け取れるという話はおかしいわけであります。そこには移行期間というものを20年、30年、あるいは最大だと40年ぐらい取らなくてはいけないという試算をしております。とすると、その間に私どもが消費税をどこかの時点で、きちんと議論をしていかなければなりませんが、例えば40年といえば、20年ぐらいまで消費税の増税の議論というものを、本来する必要がなくなるということであります」

「すなわち上げる必要がないということを、われわれとして試算として出しているものだから、議論をすれば今経済が大変厳しいときに、いったい何でこんな消費税の議論をするんだという話になるものですから、必要ないのではないか。ただちょっと誤解があったら、そのことに対して訂正を申し上げておきますが、私はこの4年間の間に消費税を上げるという議論をする必要はないということでありまして、その先の議論というものに対して議論をするなということを申し上げているつもりはありません」

【年金制度】

 岡田氏「年金制度。民主党は一つは基礎年金の部分。これは最低保障年金という形で税方式に変える。そして一元化する。こういった基本的なコンセプトは、すでに5年前から確立しているわけです。ただ、それをより具体化していく作業が必要になります。私、個人的には、超党派で昨年の12月に民主党の考え方を前提にした、より深めた案を提案させていただきました。さまざまバリエーションがあると思います」

 「しかし、そういう具体的な年金制度の制度設計は、もう今からやらなければいけないというふうに思います。制度設計をした上で、それをいつから実施していくかということがありますけど、そういう意味で、年金制度の新しい制度設計をする中で、最低保障年金部分をまかなう消費税の議論というのも、ある意味では議論としてはセットになると。入れるっていうのは少し先になります」

 「しかし、議論としてはやっぱりセットになるのではないかと私は思います。そういう意味で議論すら4年間すべきではないとおっしゃったことに、少し違和感を感じるのですが、もう一度お聞かせいただけますでしょうか」

 鳩山氏「今、そのようにお話をされた。私もその議論は必要だと思います。すなわち年金の一元化というものを現実にしていくのは、相当の苦労が予想されます。また抵抗も予想されているわけであります。従って年金の一元化というものを実現をさせていくためには相当のこの胆力というものが必要だ」

 「2年、3年の大きな議論が必要で、そこでスタートできるかどうかという話だと思います。そのときに、当然のことながら政権を取って、その財源という議論になっていくわけでありますが、財源というものを考えたときにも移行期間が20年、30年、40年あるとすれば、次の間に税金を消費税を上げるということを、決める必要はないという意味で申し上げたつもりでございます」

 岡田「移行期間が40年、50年なのか。20年程度だと思っていますけど。その間まったく消費税を充てる必要がないということではないんですね。制度が併存していく期間がその間あるわけですから。そういう意味では最初に入り始める時期というのはそう先の話ではないと、私は」

 鳩山氏「例えば40年だと40分の1ずつ移行していく」

 岡田氏「まあ、そういうことですね。そこの部分、何らかの税というものが必要になってくるということですね」

 鳩山氏「そりゃそうです。そうです」

 岡田氏「私は同時にこの議論というのは、何か政府の社会保障国民会議でも、税方式をとると、こんなに消費税が上がるということのみ強調されますが、実は、払う年金の額が同じであれば、その分保険料が減っているということになるんですね。で、そちらの方を触れずに、消費税ばかり上がるということを強調するのはフェアじゃないし、今回のこの議論も、消費税の話はよく取り上げられるんですが、これだけ国の財政が厳しい中で、保険料それから税、税の中に所得税もあれば、法人税もあれば、消費税もある」

 「そういう大きな枠組みの話として行うべきで、消費税を上げるんですか、減らすんですかいう問いかけには、私はちょっと違和感がある。もう少し大きな議論をすべきではないかというふうに思っております。年金制度についてもう一点、鳩山先生にお聞きしたいのですが、実は私が代表の時に、超党派で年金制度を議論しようと。小泉さんとそういう風に約束をして国会の中にそういうものを設けました」

 「結果的に見ると、超党派で国会の中に議論の場を作ったんですが、そして秋までには年金制度の改革の骨格を作り上げるという約束も、小泉総理がされたわけですけども、出てきた自民党側のメンバーは、100年安心プランで、これでいいんだということばかり出てきましたし。途中で郵政解散もあって、この話は雲散霧消。消えてしまいました。私は非常に今でも残念な思いなんですけど、民主党が政権を取った場合に、もしチャンスがあれば、年金制度の改革について党派を超えて、きちんと議論を進めていく。国民の立場に立ってやっていくということについて、鳩山先生はどういう風にお考えでしょうか」

 鳩山氏「私はあの当時、岡田代表が4党派でしたね、4党で年金の議論を、いわゆる超党派でされていくことに対して、懸念を感じておりました。なぜならば、いいとこ取りをされる。うまくできない場合にその責任というものが『野党が変なことを言うからできなかったんだ』という理屈に使われてしまう」

 「従って、これはどう考えても危ない話だなと。そのように思っておりました。ある意味でのその懸念が当たったと思っておりますが。民主党が政権を取った場合に、超党派で議論をするということは、また次元の違う話であって。すなわちわれわれが本当の意味で国民のために公平、公正、すなわち超党派でわれわれの手柄にしたいとか、そういう発想ではなくて、本当に国民のサイドに立って国民主権の民主党政権を作り上げていくわけですから、国民の代表としての野党の議論というものも当然、その中で必要になってくることが私はあると思っています」

 「すなわち自民党政権のときの与党の対応というものに対する懸念は申し上げましたけども、民主党が政権を取ったときに、民主党はだから同じようなことをやるよ、ということはないわけでありますから、できるだけそれはむしろ必要ならば、野党に呼びかけでもして行うべきではないか。このように思います」

 岡田氏「あのとき、党の中でもさまざまな議論がありました。ただ、私としてはリスクを取ってでも、これは進めるべき問題だと。国民の視点に立てば、超党派でしかやっぱり、年金のような息の長い問題というのは、やっぱり解決できないんだと。そういう思いで行いました。結果は鳩山先生おっしゃる通りかもしれませんけど、私、そのことを今でも後悔はしておりません」

【党運営】

「さて、ちょっと政策の話からずれてしまいますが、2番目にですね。先日、鳩山先生の方が党の運営についてご発言になりました。つまり今後の党運営については、これからはより透明性を高めていく必要があるということを言われたと思います。今まで幹事長として党の運営に携わってこられたわけですが、今までのどういうところが問題で、どういう風に変えていこうとお考えなんでしょうか」

鳩山氏「はい。一つは、党の今岡田さんの話がありましたけれども、お金の問題。ほとんど公的なお金に、依存している民主党でありますけど。その体質をそんな簡単にすぐには変わらないとは思いますが、その部分に対する透明度というものを高める。どういうものに使ったか。どういう形でお金を集めてきたかとか。ということの透明性というものがひとつあります」

「さらに申し上げれば、例えば、候補者の選定の問題ひとつ取ってみたり、あるいはその候補者にどのようにお金が動いているかということを、必ずしもすべてすることはできませんが、少なくとも執行部の共通な認識というものは作り上げていく必要があるのではないかと思っておりまして。いろいろと、さまざま言われていますが、小沢代表のなかなか、すなわち執行部といえども必ずしも透明性の中で暮らすことができなかったところがあるということも、理解をしておりまして、そういったところは徹底的に透明度を高めていく必要があるのではないかと、そのように私は思います」

【第1部終了にあたり】

 −−岡田さん。じゃあ、まとめて一言。

岡田氏「特にございません」

 −−それじゃ言い残されたこともあるでしょうから、最後に2分ずつ最後のまとめの発言をお願いしたいと思います。

岡田氏「今の議論をまとめるのですか?」

 −−最後言い残したことも含めて。

岡田氏「そうですね。もし時間をいただけるのでしたらもう1問」

 −−ディベートの時間終わりましたので。

岡田氏「もう1問したかったんですけど。私は今、お聞きいただいた、みなさんも理解いただけるように、実は鳩山先生と私の間に政策で大きな違いがあるわけではありません。重点の置き所とか、実はもう1問したかったのは、財源の話を少ししたいと思っていたわけですけど。若干、具体的なところでいくつかあるとしても、大きな違い、方向性に違いはない」

「それはやっぱり、われわれが作り上げてきた民主党の政策だからです。そのときの代表によって重点化と言いますか、色づけの違いはあります。基本的には民主党結党以来、10年間かけて、みんなで議論して作り上げてきたものであるということでございます。みなさんも普段、あんまり民主党の政策にご関心お持ちいただけないことは多いかもしれませんが、今日の話を聞いていただいて、ここまで煮詰めて話をしているんだなと、そこまで大局観を持ってやっているんだなということをご理解いただければありがたいことだと思います。以上です」

 −−じゃあ鳩山さん。最後のまとめを。

鳩山氏「かつて私は自民党の議員だったころに、こんな経験がありました。大臣になろうとしている人が、実際に何大臣がなりたいですかと、そう伺ったときに、とにかく大臣という名前がほしいんだと。何大臣だっていいんだと。そう言われた思いがあります。先輩議員に大変失望をいたしました」

「また、閣議の時にお隣の大臣の部分を平然と呼んでいる大臣がおりました。そのことを、誰もとがめませんでした。気がつかなかったのであります。このように大臣病。すなわちポストばかり求めてしまう政治とか、あるいは官僚任せに政策を放り投げてしまう政治。そこが国民のみなさま方から、愛を奪う政治に陥ってしまった最大の原因ではないか。私はそのように思っております。そういった政治を、今こそ払拭(ふっしょく)させるために、民主党は戦っていかねばなりません。ぜひ国民のみなさま方のご協力を切にお願い申し上げたいと思います。ありがとうございました」


<第2部>

【友愛の理念とは】

 −−鳩山氏におうかがいしたい。愛のあふれた国家ということを強調したが、鳩山氏はかつて、中曽根(康弘)元首相にソフトクリームみたいだと。甘いが夏になるとあっというまに溶けてなくなるといわれた。しかし、もう一皮むけたんだと。どういう皮だったのか

 鳩山氏「そこには、後日談がございまして、中曽根総理からは、2年ほど後にお会いしたときは、ソフトクリームと言って悪かったと。間違っていたと。アイスキャンデーだといわれました。なぜかとおうかがいしたら、やっぱり少しではあるけれども、芯が出てきたと。なかなかうまい言われ方をしたなと思っております」

 「私は、その愛というものが、今こそ一番必要なときだと、このように感じているからでございまして、これは、小泉構造改革というものを経て、日本のある意味で、社会がガタガタにされてしまったと。それを立て直すために、本当の意味での理念が必要だと。その理念とは友愛だと。友愛というのは、自由と民主主義の、ある意味で架け橋になるようなものであって、平等が行き過ぎてもいけない」

 「あるいは自由が行き過ぎてもいけない。その両方をうまく仲立ちをさせてもらうのが愛というものであって、その愛の政治というものを、たとえば友愛の外交だとか、友愛の経済だとか、友愛の教育とか、友愛の環境、そういったものにひとつ、ひとつですね、私は落としていきながら、自分の考えをまとめてきているところでございまして、ぜひ、その思いを政権をとって果たしていきたい。そのように思っております」

【小沢一郎氏との関係】

 −−今回の立候補は分かりにくいところがある。小沢氏と一蓮托生(いちれんたくしょう)でしたよね

 鳩山氏「そうです」

 −−それから連帯責任でしたね

 鳩山氏「連帯責任というのは…」

 −−それが、この立候補することになったのは一体どういうことなんだろうと思って。小沢さんの問題は民主党の議席を相当減らしたと言っていいでしょう。ならば、それは小沢さん、新しい体制でやってくださいというよりは、しばらくは慎んでくださいと言うのが筋ではないか

 鳩山氏「はい。一蓮托生というのは確かに申し上げました。ただ、小沢代表に対して、私は幹事長として務めていく以上、当然のことだと、そのように思っています。そして、今回、基本的には個人的な西松建設の問題で、しかし、ご本人とすれば、この問題に対しては、基本的には秘書も含めて潔白であるということを信頼をしております」

 「しかし、党内を結束をさせなければならないと。今、党の中が残念ながら、自分に対する批判がやまない。だから、辞めるという思いをされました。ならば、今、一番大事なことは、党内の結束力ということを高めていくことが必要だと。それは、小沢という人物も含めた中で、結束力というものを高めていかなければならない。その役割を自分が任じられるかどうかということをいろいろと反芻(はんすう)をいたしていく中で、やはりここは自分でやらせていただきたいと思いましたものですから、出馬の決意をいたしたところでございます」

 「それからもう1つ、小沢代表には慎んでいてもらいたい、あるいはそのようなお思いの方もおられるとは思います。ただ、私は小沢代表が代表になって、いわゆるメール問題というものも経験をいたした。そのメール問題で、大変厳しい状況の民主党を、ある意味でひとつにまとめ上げた功績、そのことによって国政選挙に、特に参院選に勝利を収めたという、この功績は認めるべきだと思います」

 「あの西松の問題でつまずいた。この問題に関しては裁判とか、あるいは当然のことながら、何らかの説明責任を果たしてもらいたいと思いますが、一方で、小沢代表の功績というものを、うまくこちら側としては継承しながら発展させていくと。考え方も。政治とは生活であるという考え方が間違っていたわけではないと。そのことを基礎にしながら、さらにそれを積み上げていくということが大事だと思っておるものですから、当然、政権交代に向けて、何らかの形で積極的に貢献をしてもらいたいと、そのように考えております」

 −−岡田氏にも小沢氏との関係を聞くが、先日、言い得て妙なことをおっしゃった。小沢さんからチチ離れしましたという発言があった。チチというのはミルクの乳なのか、ファーザーの父なのか。どっちか。いつ、どういう形で小沢氏を乗り越えたのか

 岡田氏「これは、私の本の中にも書いてあることですが、チチ離れって、親離れのことなんですね。ですから、私、初当選のときに小沢幹事長、そして小沢さんのもとで政治家としての第一歩を踏み出しましたので、政治の世界で小沢一郎さんが父親であると。もう1つ申し上げると、羽田さんが母親であるとそういう風に考えてまいりました」

 「その後、特に新進党の時代に、このおふたりの対立の構図というものが新進党分裂に最終的にはつながっていったと私は思います。そういう過程で、私は、小沢さん、羽田さん、いずれも政治家として大変尊敬しておりますので、どちらかに、一方に偏った関係というのはやめていこうと。控えていこうと。そういうふうに考えて、その時点で独り立ちしたというふうに考えています」

 −−岡田氏は小沢氏をどう活用していくのか。今度の選挙で小沢チルドレンが出てくることは間違いない。無視するわけにはいかない。全員野球だということだが、今度の選挙は本当の首相選びの前哨戦だと、非常に重要な選挙だと、私しかいないんだという割には、どうも和気藹々(あいあい)として、どこで火花が散っているのか、本当に鳩山氏をたたきつぶして権力をとる気があるのか、伝わってこない感じが若干ある。勝つためには、小沢、鳩山票を切り崩して勝たなければいかん。勝つためには特に参院を小沢氏を支える勢力に対して、小沢氏をどう使うかということをメッセージとして伝えることも、物事を変えるきっかけになると思うが、その辺についてメッセージは

 岡田氏「あまり挑発に乗らないようにしないとですね。メディアのほうは、今度の選挙を親小沢とか、反小沢と、そういう意味づけを非常にしたがっていますから。それはもちろん事実はそうではありません。そういった挑発には乗らないように、この間、鳩山さんともご相談しながらやってきた。選挙戦戦ってきたつもりであります」

「ご質問に答えるとすれば、小沢さんの能力、経験。たとえば選挙における、おっしゃるように、大変な今までの蓄積があります。この小選挙区。ひとつひとつの選挙区について、非常に具体的に、細かく把握しておられる。おそらく日本で最も詳しい方ではないかと思います。そういった経験や能力をぜひ、活用して継ぎある総選挙に臨みたいという風に思います」

 「具体的にどういうポストにという話はですね、これは相手もある話ですし、まあ人事というのは、これはトップにとって最も重要な、ある意味では権力の根源でありますから、選挙をまだやっている最中に、私が当選すれば、選ばれればこうしますということは、私は避けるべきだと、そういう風に思っております」


【国会戦略】

 −−当面、新しい代表になれば問われるのは、解散戦略というか、予算に対してどう対応するのかということだ。それによって解散時期も違ってくる。国会戦略と、もう1つ、結束と言うからには小沢氏を野に放つといかんなと、怖いなと、そういう感じがやっぱりあるのか


 鳩山氏「解散戦略からまずお話を申し上げますが、私はですね、今、衆院で強行採決を補正予算案されたと。これから参議院に回っていくと。正常な形では回りません。したがって、時間がかかると思います。ただ、私どもは、一番大事なことは国会の中で議論して戦うという野党でなければならないと」

 「戦いながらやっぱり、民主党の言っていることの方がやっぱり正しいじゃないかと。例の漫画喫茶の話も含めて、あまりにもひでえ予算だなということを国民のみなさん方に知っていただくということが、大変に重要なことだと思っていますから、変に戦略的に解散を早くやってもらうためには、もう議論はいらないから、1日、2日で参議院あげてしまえということを、私はやってはならないと、そのように思っております」

 「一方で、引き延ばし、引き延ばしをするということを行えば、そのことも、私は国民のみなさんに評価されないと思っていますから、自然の時間の流れの中で、やはりこの程度ならば十分だなと。われわれが野党共闘の中で判断をする時間の中で、再採決というものを行うことが望ましいのではないか。ここは変に奇策をろうすることはわなに落ちるだけではないかと。しかし、それを行った中で、実は、公明党さんとのかかわりの中で、解散を彼らが打てるかどうかは分かりませんが、われわれとすれば、だから勝負をかけて、補正予算終わったじゃないか。ならば、堂々と解散をしなさいということを求めていくつもりでございます。それが解散への戦略でございます」

 「それから小沢さんを野に放つということでございますが、野に放つとライオンのように暴れ回って、結局、院政を敷くという話になるんではないかという話だと思います。私も挑発にはあまり乗らない方がいいのではないかとも思っておりますが、その意味では、むしろ、しっかりとした役を与えながら、役割以上のことをなさるべきではない。するべきではないと。役回りとして、きちんとしたことを行ってもらえるような立場で頑張ってもらおうと、そのように思っております」


【経済対策】

 −−話をうかがって、選挙の公約も拝見したが、今、空前の大不況だ。製造業、車も電気も大変な赤字だ。雇用問題も深刻だ。そういった景気についての現状認識、厳しい認識が民主党は足りないんじゃないかと。昨年秋からの政府の対応について、批判はするけど、どんな対案が出たのか。あまりピンと記憶に戻ってこない。現状の日本経済の再生、景気の回復ということを見たときに何合目まできたのか。あるいは全治何年か。首相になったときに、具体的に立て直しにどういう処方箋(しょほうせん)を出すのか


 鳩山氏「大変大事なご指摘だと思います。私どもは現在の経済を大変、当然のことながら厳しい不況の時代だと、そのような認識をしています。ただ、これをただ単に外からやってきた不況だとは思っていないといことがまずひとつ。すなわち、ある意味で、内政の失敗によって加速してしまっているというのが1点でございます」

 「ただ、だからこそ、こういう事態に対して、われわれがどのように対処していくべきかということに対して、答えをしっかりと打ち出す必要があると思います。それをひと言で言えば、私どもはいわゆる、消費者の立場に立って、家計、いわゆる懐具合を2割アップさせるという戦略を考えていきたいと、そのように思っておりまして、そのための政策というものもいくつも並べているところであります」

 「そのいくつかを申し上げれば、いわゆる子供手当31万2000円、中学卒業まで、1人あたりですが、これを永続的に少子化対策として使わさせていただきながら、このことによって、消費を刺激をしたいということがひとつでございますし、当然、雇用対策というものも、極めて重要だと思っておりますので、雇用対策、いわゆる失業手当というものがおりない人たちに対して、職業訓練を行っている間に、月10万程度というものを支給しながら、早く新しい職業を見いだしていくということに全力を傾けるということ」

 「また、今までよく言われている高速道路の無料化とか、暫定税率というものの廃止とか、さらには農業、漁業における個別所得補償制度というものの創設、こういったものを通じて、国民のみなさん方に直接、消費購買能力を高めていく、家計というものを2割アップさせるという戦略を最優先をさせていきたいと。そのことが結果として、いわゆる内需拡大に大きく資する話になると、そのように考えています」


【憲法改正】

 −−憲法について特に鳩山さんにうかがいたい。鳩山さんは数年前に、「新憲法試案」という本を出して、改正に並々ならぬ意欲を表明した。そのなかでは自衛軍の創設、集団的自衛権についても発言していると記憶するが、代表になったら、あるいは首相になったら、憲法改正問題には、どういうスタンスで臨むか。


 鳩山氏「私の考え方は、その本の中に書かれております。今、お話がありましたように、憲法9条についても、小泉首相の時に、必ずしも憲法の議論が十分されないまま、勝手にイラクへの陸上自衛隊、あるいはアフガンへの海上自衛隊の派遣がされた。むしろ、きちっと国会の中で、先ほどの国連の話もありましたけれども、どういう時ならば行くべきか。しかし、行くべきでないことは多々あるのではないか。そのことをキチッと仕分けができるような憲法の議論をして、憲法を作り上げていくべきだ」

 「ある意味で、より平和になるための、平和に貢献するための憲法というものが必要ではないか。そう思っています。ただ、私のあの新憲法試案の一番の目的は、最初に申し上げた地域主権の国を作るための憲法だ。そのように思っていただいて結構でありまして、その部分に関しては、できる限り早く、議論を別に、憲法にかかわらず、行って参りたい」

 「しかし、経済がご案内の通り、私は3年、岡田さんはさらにそれ以上という話がありましたが、経済を建て直していくときに、大変いろいろなことを、大きな手術を行っていかなければならない。脱官僚的な政治というものも作りあげていかなきゃならない。それには、大変な胆力が必要であると。このような時に、憲法の議論を大上段に構えている余裕があるのか、ないのか。そのことは見極めなければならないと思いますし、今、総理になったときに即、憲法改正に手をつけられるという状況では、残念ながらないな。そのように考えています」


 −−憲法改正には手をつけないとしても、集団的自衛権の解釈はどうするか


 「集団的自衛権の解釈の問題に関しては、私は集団的自衛権というものが、たとえば、究極的に言えば、沖縄にアメリカ軍が存在することも広い意味で集団的自衛であるし、あるいは、別のアメリカに何かあったときに、有事だということで、アメリカに日本の航空自衛隊が派遣される。こういったことも当然のことながら、集団的自衛になるわけでありまして、集団的自衛の考え方の範囲が非常に広すぎる」

 「その中ですべてができないというべきでもないし、すべてやっていいという話でもない。私はそう思っておりまして、その中の、しっかりとした区分けというものを、できるだけ早い時期に行っていかなければ、現実の政治に対応できない。そのように考えます」


 −−憲法について岡田さん、短く願います


 岡田氏「私は、憲法をイデオロギーで論じるべきではないと。たとえば、戦後レジーム(体制)の転換とかですね、そういうイデオロギーで論じるべきではないと思います。憲法というのは、戦後60年近く、国民の間に定着して参りました。それは、国民が認めたから、その憲法はあるわけで、しかし、時代の変化に応じて、変えなければいけないところは変えるということは当たり前のことだと思います」

 「今、そういう意味では、個別にどこを変えるという議論をすればいいのであって、全体を作り替える作業に政治が大きなエネルギーを割くというのは、私はあまりよいやり方ではない。今、急いでやらなければならないことが沢山あると思っています。私がもし、80歳ぐらいでも国会議員だったら、憲法の改正も考えますけども、今度の総選挙で総理になるということであれば、当面の課題としては、かなりプライオリティーは低いということだと思います」


【幹事長人事】

 −−どちらがなっても挙党態勢、党内結束ということだろうが、自分がなったとして、幹事長を誰にするかは党内結束を保つ上で、非常に重要なポイントになると思う。鳩山さんは私が勝てば岡田幹事長でもよいなぁ、という発言をされているが、確認しておきたい。それから、岡田さんは人事について述べるのは僭越(せんえつ)と言うが、決して僭越(せんえつ)ではなくて、非常に大事なことだ。幹事長を誰にするかは態勢を示す上で、格好の材料だと思うが、自分が代表になったときの幹事長についてうかがいたい


 鳩山氏「まさに橋本さんがおっしゃったように、人事は大変重要であります。それだけに、今、事前にそのことを申し上げることに対しては、慎重にならざるをえないということだと、岡田さんの思いも理解しております。ある意味で、私もそう思っておりますが、一方で、やはり、今まで、トロイカ体制というもので4人である意味での執行部をつくって行動して参りました。それに政調会長、国対委員長を交えてさまざまな判断を重ねて参りました。それに対し、岡田さんは大変優秀な方であり、今、代表選挙に立候補されている」

 「挙党態勢を作るということであれば、その方をできるだけ、処遇を申し上げたいと。その思いは大変強く感じておりますので、私としては、いわゆる新トロイカ体制のようなものを作り上げて参りたいと思いますし、その中で岡田さんにも頑張っていただきたいなと、そんな気持ちを申し上げているところであります」 


 岡田氏「これは気をつけなければならない話なんですね。私は苦い思い出がありまして、菅さんと代表選をやったときに、菅さんは、私が代表になれば、岡田さんを幹事長にするといわれた。そうしますと、私を支持しようと思っていた人も、それなら、まぁ、迷っていた人も、2人ともなるなら、まぁいいかということで、菅さんにだいぶ入れたと思うんです。私は票が開いて負けてしまいました。なかなか巧みなことだったと思うんですね。選挙の前にやっぱり、ポストの話をするのは、私はいかがなものか、と思います」

 「代表に当選させていただければ、それこそ真剣に考えて、ポストというのは何か、戦術的にやりとりするのではなくて、本当にこの人こそがという最善の布陣を敷かないと、政権交代はできないと私は思いますので、現時点では、具体的に言及することは控えさせていただきたい。それだけ真剣に考えているということを、ご理解いただきたいと思います」


【再び友愛とは】

 −−ぜひ鳩山さんにひと言。「友愛」というが「友愛」のイメージがつかめない。「友愛外交」「友愛財政」いろいろおっしゃったが、今時、女子学生でも使わない。教育の現場でもほとんど使われない死語に近い言葉を、おじいさんが言っていたということで持ち出されても、中身が見えてこない。効き方としては、政権をとられて、いろんなことをされると思うが、これまでの友愛政治の実績をひとつ挙げてもらえないか


 鳩山氏「友愛という言葉が死語になっているところが日本の最大の問題ではないか。そのように、私は真剣にそう思います。従って、友愛外交とか友愛の経済。ボランタリー経済というようなものが、私はひとつの友愛の経済学だと思います。あるいは、コミュニティーソリューション。これはちょっと、なかなかはやらない言葉でありますが、コミュニティーで問題を解決していく経済、あるいは社会保障。こういったものが、ひとつの友愛の形だと」

 「愛というものが仲立ちして初めて、低負担で高満足が得られるような社会を築くことができると。そのように考えております。また、私は、麻生総理の外相時代に、価値の外交というのを話されましたが、私は価値の外交は嫌いです。価値ではなくて、価値の同じくする国々が外交関係、絆(きずな)を強めるのは当たり前の話であって、外交というのは、価値観の違う国々が、いかに共存共栄というか、自立をしながら共生をする。そういった関係を作り上げていくということでありますだけに、私はそこに、相当大きな違いというものを、特に外交とか経済において見い出していくことができる。そのように思っております」


【経済対策】 

 −−全治何年だと

 鳩山氏「私どもも、やはり、3年かかると思いますが、そのためには、やはり、無駄遣いの部分を徹底的に排除するということを一つは行って以下なければらちがあかない話だと思います」

 −−もうひとつだけ。国内の所得を増やすということだけで、グローバル化した経済の、海外での落ち込みは大変大きい。輸出企業は。製造業の赤字は大半がそれが原因だと思うが、それで立ち直るのか

 鳩山氏「当然のことながら、私どもはそれだけですべてできると考えているわけではありません」

 岡田氏「私はかなり深刻な状況だと考えております。4月、5月ぐらいで、自動車については、在庫調整はある程度終えつつあるといわれますけれども、しかし、しょせん最終需要が3割以上の減ですから。多少は在庫調整を戻したとしても、つまり5割減が3割減に戻ったとしても、それ以上ということはしばらく時間がかかる」

 「根底にあるのは、アメリカの過剰消費。そこに依存して日本経済は10年間やってきた。輸出のGDP比率も10%ぐらいの時代がずっと続いていたわけですが、今は18%。つまり、小泉、安倍時代に景気の回復が改革の結果、行われたという風に言ってきましたが、実態は輸出が増えただけ。そして、その背景にあったのは円安であり、金利安。つまり、改革の結果、経済が成長してきたのではない。そういう認識に立たねばなりません。そして、これからはアメリカの過剰消費に依存できない。そういう中で、新しいモデルを作っていかなければなりません」

 「ひとつは鳩山さんが言われた内需の拡大ということであります。しかし、少子高齢化の中で、もちろん、医療、介護とか、教育とか一次産業とか、さまざまな内需の種はありますけれども、少子高齢化の中で、そこだけに依存することはできません。従って、アメリカに対する輸出はなかなか厳しいけれども、アジア全体が成長する中で、アジア内需。これは最近、総理も使っている言葉なので、『私の方が先に言ったんだよ』と言いたいんですけれども、このアジア内需をどうやって、たとえばODAを使ったりしながら、日本がさらに創造していくかということも非常に重要なこと」

 「そういう構造を変えていくためには、私は3年でも厳しい。当面の回復というのは、在庫調整もあり、あるいは中国の内需とかもあって、ある程度メドがついていくかもしれませんが、構造的にカチッとしたものを作り上げるためには、私はさらに時間をかける必要があると思っています」

【環境対策】

 −−対策の中で、岡田さんは一種、グリーン・ニューディール的なことも書かれている。ネクタイも緑が多いと思う。麻生政権で、それに似た考え方で打ち出されているが、岡田さんの考えるグリーン・ニューディールはどこが違うか。

 岡田氏「将来のビジョンがないんですね。つまり、具体的に、この問題は、経済だけの問題だけではなくて、根源は、このまま行けば、人類が生存不可能な状況になりかねない。そういう中で、科学は既に結論を出しているわけです。そして、その結論に基づいて、温暖化ガスの排出量を減らしていかなければならない。思い切って減らしていかなければならない。そのことは結論が出ていて、後は、政治がどれだけ応えるか、という問題だと認識しています」

 「中期的には、60から80。2050年に減らすということは、福田内閣の時に閣議決定されました。しかし、2020年の中期目標については、まだ、政府は答えを出しておりません。この辺が数字がきちんと示されて、その数字を実現するために、具体的な手段をどうするのか。自然エネルギーを思い切って導入するために、今のやり方だけでいけるのか。あるいは、炭素税をどうするのか。排出権取引をどうするのか。具体的な数字をまず出して、それを実現するための手段をもっと急いで議論すべきである。そう考えています」

【国債】

 −−消費税だが、鳩山さんにうかがいたい。年金改革との関連で何十年にわたって経過措置をやるかで消費税の議論も変わってくると。片方、麻生内閣の経済対策のせいでもあるが、国債の発行が急増している。今年度は税収を上回るかもしれない。財政的に、社会保障の部分をのぞいてみても相当厳しい状況がある。今後4年で消費税を議論しないといった場合、長期金利が急騰したらどうするか。約束していいのか。厳し目の質問かもしれないが

 鳩山氏「当然のことながら、経済というものを慎重に見極めていく必要がありますから。私どもとすれば、長期金利が急騰しないような環境をつくっていかなければなりません。そのためにも、国債の発行ということが無尽蔵に膨れ上がっていくような今の現政権というもの自体が、機能しなくなっているというか、あまりにも勝手すぎることを行っていると申し上げなければなりません」

 「私どもは、一般会計と特別会計80兆円だけの話ではなくて、207兆円でしょうか。両方合わせて、共通部分をなくした207兆円というものの中で、議論を進めていきながら、経済を活性化させていくためのさまざまな手立てを講じていく必要がありますし、その中で、無駄をとことん排除するということを行って、これ以上、国債発行を行わないような日本の、経済の仕組みを作らないとならないんです」

 「財源論の話も、さっき、岡田さんがやろうというお話があったわけでありますが、財源論自身、ある意味、官僚が作り上げてきたものでございまして、官僚の手の内にのると財源が足りないよという話になるわけでございますが、私どもは、そもそも、官僚の論理のなかに陥ってはならないと思います。ただし、すべての仕組みそのものを組み替えていくなかで、財源も見い出すことができる。そのような努力をしていきながら、国債の発行をこれ以上、行わせないような体質の政府に変えていくことが何より必要ではないでしょうか。そのように思います。

 −−岡田さんも簡単に今の点について

 岡田氏「今の200兆円の、一般会計、特別会計含めてですね、その1割程度、20兆程度は、無駄の削減のなかで出し得るんだと、民主党は主張しています。私も基本的にその立場に立ちます。ただ、今までと少し違うところがあるとすると、これは具体的に、それが出し得るメドがついたところで、この20兆というのは、民主党の政策をするための財源なんですね」

 「ですから、具体的な財源を出し得たところで、民主党の政策を順次やっていく。財源なくして政策なし、という基本的考え方に立って、とにかく、財源の具体的メドがまだ立たないのに、政策だけスタートしてしまうと、さらに、国債の発行を増やすことになりかねませんので、そこの順序はやっぱり気をつけて、進めていかなければならない。思い切って、歳費を削減する。しかし、それは具体的にメドがついたものから、その額に応じて、民主党の政策を実行に移していくと、そういう風に基本的には考えるべきだと思っています」


【外交・安全保障】

 −−話題を変えて、外交・安保保障について尋ねたい。自衛隊を軸に、国際平和協力にどうかかわっていくかという問題だが、インド洋の給油支援の問題の時に、民主党は、国連決議がないオペレーションであり違憲であるという立場を取った。これは小沢さんの主張をベースにしたと思うが、そのころ、小沢さんは雑誌に論文を発表して、国連の決議がある、つまり、国連の集団安全保障の枠組みであれば、自衛隊は9条の枠組みにとらわれることなく、極端に言えば、武力行使に参加できるのだと言った。当時、幹事長で代表を支えた鳩山さんは、この考え方を踏襲するのか


 鳩山氏「私は、小沢代表の発想を一言で言えば、国連至上主義だと申し上げたい。それに対して、私は国連中心主義程度だと、そんなように考えております。すなわち、国連が決めたもので認めたものなら何でもやるべきという発想そのものを、必ずしも踏襲するつもりはありません」

 「国連が認めていないことに対し、勝手にアメリカから言われたから、何でもやらなきゃいけないよ、という形で今の政権が動いているということに対しては、私たちは、大変な懸念を感じておりました。従って、アフガニスタンの本当の彼らの国民のための政策に決してなっていないよというようなことで、もっと本当に大事な人道支援を行うべきではないか。そちらの方が先ではないか」

 「そのような主張を申し上げてきたつもりでございます。従いまして、私とすれば、国連中心主義的な発想の中で、国連が認めたものだから何でもやるよという話では当然ありませんし、武力行使になるかならないかというところには、歯止めをかけなければならない一線があると思っておりまして、何でもできるという認識はしておりません」


 −−武力行使に加わることはできないという考え方か、あるいは、できればすべきではないと


 「それは、そのことによると思いますが、武力行使につながるような可能性があるところには派遣すべきではないと考えております」


 −−岡田さんはいかがか


 岡田氏「この問題は実は長いんです、小沢さんと私の議論は。私の主張は、やはり9条から外れると。国連決議があれば。国権の発動ではないという小沢さんの考え方は、私は違います。つまり、やはり9条の枠の中の問題だろう。したがって、武力行使そのものは認められない。国連の決議があったとしても認められないと。基本的にはそう考えています。なぜ9条があるのか」


 「その淵源(えんげん)を考えると、やっぱり、私たちは60年前の戦争の反省に基づいて、自分の手を縛ったわけです。海外で自分たちの判断で武力行使をしない。その淵源に立ち返ったときに、国連決議というひとつの、いわばオーソライズされたものがあるときに、われわれはもう少し、武力行使に至らない範囲で、しかし、自分だけの判断でやる場合と比べて、もう少し緩めてよいんじゃないか。そういう風に私は考えています」

 「そういう趣旨からいうと、PKO5原則なども武力行使に至らない範囲で使い勝手が良いものにしていくべきじゃないか。国際的な貢献は行っていく。もちろん、国連決議があれば、何でもやるということではありません。国連決議というひとつのオーソライズを経て、その上で日本としてやるべきかどうかを、それぞれ判断していけばよい。そういう風に考えています」


 −−岡田さんが代表時代に、「岡田ビジョン」を作った。そのときマスコミから、それで対米関係は大丈夫かという批判が出た。米国の大統領はブッシュからオバマに代わって、核廃絶演説をしたり、岡田さんにとっては天の理、われにありという感じかなという気がする。そんなときに、この間、沖縄の米軍基地をグアムに移転する。その費用を負担する協定がありました。これに民主は反対した。こういう米国との基本的な政策はどの辺に立脚するのか。


 「私はオバマさんの就任演説を見て、地球温暖化問題、あるいは核の問題が項目として入っていました。核についてはさらにプラハでの演説があった。私はこの4年間、力を入れてきた温暖化や核の廃絶に向かっての努力。そういう問題にオバマ大統領も関心を持っていると聞いて、確認して、非常にうれしく思っています。オバマ大統領とは、信頼関係に基づいて、いい関係ができそうだと感じています」

 「そこで、ご質問ですけれども、あの協定に反対したのは、結局、普天間への移転を前提にした、そういう構成になっていたから、われわれは賛成できなかったということであります。普天間の問題も、大変難しい問題です。確かに日米関係を考えると、難しい問題ですけども、やはり、沖縄に普天間、嘉手納という極めて大きな基地が2つもある。これが普通のことなのか。ずっとこれから30年、50年、こういう状況を続けていくのかどうか。そういう観点に立って、もう1回シッカリした議論を日米間で行っていく必要がある。そういう風に考えています」




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